巨額の建設費を
安定確保できるのか

 根本的かつ最大の懸念は「(1)安定的な財源見通しの確保」だ。10年以上にわたり計1兆円を超える資金を投じる巨大プロジェクトだけに、整備期間中に確実に完成させるため財政的な裏付けが必要だ。

 整備新幹線は1989年の北陸新幹線高崎~軽井沢間の着工以来、段階的に建設を進めてきたが、議論の中心は常に財源スキームだった。現在の建設費負担の仕組みは、「JRが貸付料として負担する分」を除いた額を、「国が3分の2、都道府県が3分の1で負担」する。

 貸付料とは整備新幹線の施設を保有する鉄道・運輸機構に対し、線路を借りて運行するJRが支払う「使用料」だ。貸付料はJRが整備新幹線の開業で得られる収益(受益)を限度に設定される。貸付料の解説は次の項目に譲る。

 敦賀~新大阪間の財源を考えてみる。同区間の概算建設費は最新試算で3.9兆~5.5兆円とされているので、ここでは中央値の4.7兆円を仮置きする。長野~金沢間の2.6倍にあたる途方もない金額である。

 この工事をどのように進めるのか。整備新幹線のキャッシュフローは、国の整備新幹線予算が約800億円、地方の負担はその半分で約400億円だ。これにJRが支払う貸付料が全線合計で年額793億円を加えた約2000億円でほぼ固定されており、この範囲でやり繰りしなければならない。

 年2000億円で4.7兆円支払うと単純計算で24年だ。工期は26年とされているのでちょうどいいように見えるが、2000億円の使途は北陸新幹線だけではない。工事中の北海道新幹線新函館北斗~札幌間は工事が難航しており、事業費は3.5兆円まで増える見込みだ。2025年時点の残工事は約2兆円、2038年度まで年平均1500億円が必要だ。工事の進捗次第で開業がさらに遅れる可能性もあり、その場合、建設費もさらに増加する。

 西九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間も動き始めた。フル規格(通常の新幹線)の整備を求める国交省・長崎県と、多額の費用負担と便益が釣り合わない佐賀県の対立が長らく続いていたが、国交省と佐賀県が7月17日に環境アセスメントの実施と負担軽減策の検討に合意し、着工の可能性が出てきた。同区間の建設費は、国交省の試算では6000億円、佐賀県の試算では1兆円となっており、それなりの財源が必要だ。

 建設費に占める貸付料の割合と、年度単位のキャッシュフローは異なる。つまり、今の枠組みでは資金が足りないのだ。開業後の貸付料を前借り(借入金)して建設費に充てた事例はあるものの、長期にわたる活用は現実的ではないし、金利上昇局面では成り立たない。