JR負担75%が
非現実的と言えるワケ

 同長野~金沢間の総事業費は1兆7801億円で、JR東日本・JR西日本の貸付料は7350億円、JRの負担率は41.3%だった。この他、東北新幹線盛岡~八戸間は52.3%、八戸~新青森間は45.7%と高い。

 一方、九州新幹線は博多~新八代間こそ27.4%だが、新八代~鹿児島中央間は9.7%、西九州新幹線は2.5%に過ぎない。貸付料は建設費の一部を負担するものではあるが、建設費を償還する性質のものではない。

 それでも仮に前原氏の発言どおり、JRの貸付料で建設費の75%を賄うとしよう。先ほどの建設費4.7兆円の想定では、75%は約3.5兆円だ。30年で割って年間1175億円の貸付料を支払う必要がある。北陸新幹線JR西日本区間の貸付料は年173億円だ。敦賀~新大阪で約1200億円は逆立ちしても出てこない。

 約1200億円の一部を直通するJR東日本に負担させようという声もある。それ自体が現在の整備新幹線スキームに反するため、根本から制度設計を変えなければ実現しない。だが、制度を改正したとしても現実的に不可能だ。整備新幹線全路線の貸付料が年約800億円、うちJR東日本が442億円を負担している。仮に3分の1、400億円の負担を求めた場合、1路線のためだけに貸付料負担は2倍になる。

 項目は前後するが、「(4)営業主体としてのJRの同意」とは、整備新幹線が国鉄の二の舞いとならないための大前提だ。整備新幹線の輸送需要が東北・上越新幹線など既設の新幹線より劣ることは初めから分かっていた。そんな路線を成立させるために国・地方の資金を投じて建設するが、整備後の新幹線を経営するか否かは、営業主体の経営判断によるものだ。そこで、あらかじめ営業主体としてのJRの同意を得なければならないとの条件がある。

 政治の都合で赤字路線を押し付けるなどということはあってはならない。JR西日本としても自社が希望した「小浜・京都ルート」の早期整備を待望しているところではあるが、(多少の譲歩はあったとしても)いくら払っても何をしても建設してほしいなどとは考えていない。JRが納得する従来のスキームによらない限り、着工は不可能である。

 北陸新幹線高崎~軽井沢間着工に始まった整備新幹線事業は、新規着工ごとにさまざまな議論が行われ、その積み重ねとして着工条件が明文化されていった。そして、2009年12月に現在の「着工5条件」を発表したのは、民主党鳩山由紀夫内閣の国土交通大臣だった前原誠司氏だ。前原氏には着工5条件の重みを考え直してもらいたい。

 長くなったので一旦、ここで区切る。次回は「(3)投資効果」について考えたい。