これくらいできて当たり前という上司の基準に怯える必要がなく、部下自身の主観で対話が始まる。心理的なハードルが大きく下がります。しかもこの問いは、(1)上司が自分から能動的に働きかけ、(2)具体的に、(3)一番という形で答えを選びやすくしている。この3つがそろっていることが重要です。
こうした問い方は、カウンセリングやコーチングの世界では、スケーリング・クエスチョンと呼ばれ、体系立てて用いられています。曖昧な状態や感情を数値や順位で整理して答えやすくするテクニックです。
たとえば、「今の心の状態は100点満点で何点ですか」「今の仕事のしんどさは10点満点で何点ですか」と問うだけで、答えやすくなります。これは業務を教える場面でも使えます。ひと通り説明したあと、「今の説明で分かった?」と聞く代わりに、「誰にも聞かず一人でできる状態を10点とすると、今の理解度は何点?」と尋ねる。同じ確認でも、返ってくる答えは格段に正直なものになります。
大切なのは、数字を聞いて終わりにしないことです。「最近どう?」と尋ねて、「まあ、ぼちぼちですね」と返ってきたとします。ここで引き下がらず、「では最近のしんどさは10点満点で何点?」「仕事のやりがいは何点?」と聞く。これならどんな人でも答えられます。
やりがいは3点、と言われたら、そこからが本番です。足りない7点は何によるものか、どんな仕事が楽しくて3点あるのか。そうやって具体的な回答を引き出していきます。
7点の内容がわかれば、それを埋めるのが次のアクションです。3点の中身が見えれば、あなたはこういう進め方のときに楽しいのだから、その機会を増やそう、と次に展開できます。
しかも、点数を用いれば、同じ尺度で状況を客観視できるので、上司と部下の認識にズレが生まれません。やりがいが3点と言われれば(もちろん人それぞれに10点の基準をどこに置くかは違うにせよ)、いや、8点の仕事を与えたはずだ、ということにはならず、行き違いが起きにくい。言われた側も、不思議と責められている感じはしないものです。共通のものさしの上で、足りない分をどう埋めるかを一緒に考えていけるからです。







