『風、薫る』第105回より 写真提供:NHK
「うまく歌うな」
朝ドラで挑んだ意外な演出
――これまでを振り返って、演じていて強く心が動いたシーンを教えてください。
特に動いたのは、出征が決まったシーンです。直美と出会う前は、国のために自分の身を捧げるくらいの気持ちで軍人として仕えていた。その気持ちが揺らぐ瞬間が訪れます。
直美のためにも帰ってきたいし、子どものためにも帰ってきたいと思ったでしょうね。生まれてくる子どもの名前を考え始める場面も印象的です。
それと、直美のために牛肉と馬鈴薯の煮付け――肉じゃがを作るシーンも印象に残っています(第105回)。小川と直美の仲の良さが出た、いいシーンです。
――料理が直美よりできる設定です。甲斐さんは料理をしますか。
ここ最近、体づくりの面でも自炊をしていたんです。NHKの夜ドラ『ラジオスター』に出たときと比べると10キロぐらい違うんですよ。軍人役としての体づくりをするため、自分で料理を作って、塩分や油の量を調節しました。
ちょうど料理を始めたら、まさかの料理のシーンがあって、役に立ったなと。自分の人生と小川の人生がリンクしました。
――歌を歌う(オンエアでは鼻歌)シーンもあります(第105回)。
小川の歌った『埴生の宿』の歌詞がすばらしいんです。豪華な家より埴生の家(土作りの質素な家)のほうがいいという歌詞で。つまり高い安いではなくて、誇りが大事なのだというもので、小川が好きになりそうな曲だと思いました。
ただ、「うまく歌うな」と言われたんですよ。僕はこの5年間、ミュージカルの舞台に立ってきたのですが、うまく歌うなと言われたのは初めてでした(笑)。
それには理由があって、小川は軍人で、歌のプロではないからなんです。それと、当時の歌い方といまの歌い方は違って、いまのような洋風なポップス調な歌い方はしないということで、当時のような歌い方を特訓しました。
そもそも日本語の発声法と当時の発声法は全然違う。母音の発声が違うとか、音が移り変わるストロークが違うとか、いろいろあって興味深かったです。
――最後に『風、薫る』をご覧になっている方々にメッセージをお願いします。
世にも珍しいほどまっすぐな小川は、現代人からはとても輝いて見えるでしょう。当時の明治時代といまとでは「尊敬」という言葉の概念が変わってきているのではないかと僕は思っています。
「敬う」ことはいまの人たちもできているかもしれないけれど、「尊ぶ」ことは意外とできていないのかもしれない。人を尊ぶことができる小川を通して、尊ぶことの大切さを伝えられたらいいなと思います。
1997年11月14日生まれ、東京都出身。2016年、『仮面ライダーエグゼイド』の仮面ライダー役でデビューし、『キンキーブーツ』のローラ役など、ミュージカル等の舞台でも活躍。2025年には大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に出演し、2026年にはNHK夜ドラ『ラジオスター』で海野リクト役を演じた。同年、連続テレビ小説(朝ドラ)『風、薫る』に小川吾郎役で出演し、自身初の朝ドラ出演となった。
フォトギャラリー
主なシーンより
『風、薫る』第108回より 写真提供:NHK
連続テレビ小説『風、薫る』
作品情報

連続テレビ小説「風、薫る」。主人公はそれぞれに生きづらさを抱えた2人の女性。当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う——明治という激動の社会を舞台に、幸せを求め生きるちょっと型破りな2人のナースの冒険物語です。
【放送データ】
2026年度前期 連続テレビ小説『風、薫る』毎週月〜土曜 午前8時〜(NHK総合)ほか
※土曜は1週間の振り返り
【脚本】吉澤智子
【原案】田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
【音楽】野見祐二
【主題歌】『風と町』Mrs. GREEN APPLE
【語り】研ナオコ
【出演】見上愛、上坂樹里ほか
【スタッフ】
制作統括:松園武大 宮本えり子
演出:佐々木善春 橋本万葉 新田真三 松本仁志 内田貴史 ほか
写真提供:NHK







