御社は今、いわゆる「300人の壁」に迫る組織フェーズにあり、この規模では一般に、採用や育成、評価制度に課題が生じます。私は前職で、従業員数が300人に達する時期に採用を担当し、同じ課題に直面し、こういう施策でこんな成果を出しました。御社もゆくゆくは同様の課題にぶつかるはずなので、このように貢献できます、といった具合です。

 相手の組織課題と、自分が再現可能な強みや実績とが一本の線でつながる。ここまで示せて初めて、確かにうちに必要な人材だと思ってもらえます。

「知ったかぶり」は絶対NG
謙虚に仮説を提示できるか

 注意したいのは、企業分析は正解を当てる試験ではないということです。分析が多少ずれていたとしても、ここまで調べてくれたのか、という事実が評価されます。

 ただし、自分の経験から、御社の課題はこれに違いないから任せてほしい、という断定は禁物です。公開情報や面談を踏まえ、現時点ではこう理解しています、とあくまで仮説として話す。

 本当に優秀な人は、自分の経歴を説明するだけで十分だとは考えません。まだ入っていない会社のことは、面接官のほうが詳しいと認め、教わりながら自分の仮説を修正していく謙虚さと相手へのリスペクトを持ち合わせているものです。

 なお、面接の準備の一環として、合否に関係なく現場の社員と話せる「カジュアル面談」の機会があるなら、その時間を有効に使ってください。

 雑談で終わらせず、業務の流れや組織課題、期待される役割、入社後に直面する壁を確認し、自分なりの仮説を立てる材料にしたり、仮説を話し、相手の反応を見て修正したりするのです。優秀な人は、面談や面接の場で意識的に情報を集め、次の面接では先日伺った話からこう考えました、と切り出します。

 専門的な採用手法として、入社後の仕事の一部を実際にやってもらうワークサンプル面接があります。事前に秘密保持契約を結んだうえで、自社のリアルな課題やデータを渡し、分析して提案してもらうのです。経歴や話術だけでは見えない分析力や課題理解、成果の再現性を直接確かめる最終試験のようなものです。

 ワークサンプル面接は、人事やマーケティングなどを一人で担うことの多いベンチャー企業でよく見られますが、大企業ではあまり行われていません。ただ、こうした採用方法を採用していなくても、御社の組織課題はこうだと思います、私はこの役割でこう貢献できますと口頭で語れる候補者は、大企業の面接官に強い印象を残すでしょう。

 とりわけ部長や上級管理職といったハイクラス層の転職ほどそうした能力が強く求められます。現場の担当者なら、言われたことをこなせるかどうかが問われますが、ある領域に責任を持つ立場になれば、その領域の課題を解決できるかどうかが問われるからです。

 多くの選考では、最初の面接で人柄や会社のカルチャーへの適合性を見て、この人と一緒に働きたいかを確かめ、そのうえで最後に、実際に成果を出せそうかを見極めています。その会社について仮説を語れることは、採用の最後のひと押しとなるのです。