「ブランドとCXをつなぐべき」と分かっていても、企業が動けない本当の理由とはpu- / PIXTA

ブランドとCX(顧客体験)を一つのものとして捉える。ここまで4回にわたってその原理を論じてきた。多くの人にとって、それはもはやとっぴな話ではなく、むしろ当然のことに見えるかもしれない。にもかかわらず、実際の組織はなかなか動かない。なぜだろうか。問題は知識や能力ではなく、手放すべき前提が互いに支え合っていることにある。今回は、企業が動けない本当の理由に向き合う。

ブランドとCXを分けてきた六つの前提

 この連載では、ブランドとCXを分断してきた六つの暗黙の前提を、一つずつ問い直してきました。

 第1回で注目したのは、「ブランドは企業が管理できる資産である」という前提です。ブランドは企業の手元に置かれた所有物ではなく、顧客の感情の記憶の中で生きているプロセスです。管理するものではなく、育てるものとして捉える必要があります。

 第2回では、さらに三つの前提を取り上げました。「組織の壁は体制を変えればなくせる」「ブランドに取り組む企業と取り組まない企業がある」「ブランドは約束であり、CXはその履行である」。これらに共通しているのは、すべて「企業」を主語にしていることです。主語を企業から「顧客の感情の記憶」へ移すことで、ブランドとCXを分けて見ていた認識のずれがほどけていきました。

 第3回で焦点を合わせたのは、「測定できないものは管理できない」という前提です。しかし、経営にとって重要な価値は、必ずしも測定しやすいものの中にあるわけではありません。意味の層や人格の層のように数値化しにくい領域にこそ、顧客との関係の深さは宿ります。

 第4回では、「長期的なブランド投資と短期的な売り上げは対立する」という前提を疑いました。パーパスから現場の判断までを貫く1本の線がガードレールとして機能していれば、長期と短期は同じ方向を向きます。対立は線がないときに生まれる錯覚です。

 このように、過去4回を通して六つの前提を問い直してきましたが、そこで見えてきたのはこの課題です。

 「企業が動けない理由は、能力ではなく、手放せない前提にある」

 では、その前提を一つずつ取り除いていけば、組織は動けるようになるのでしょうか。話は、そう単純ではありません。