各部門のDXが成功しても、会社は変わらない
設計、開発、製造、ITなど、機能ごとに組織が分かれている企業では、各部門が個別にDXを進めても、会社全体の成果につながらないことがある。
たとえば、設計部門が最新のCADを導入し、業務効率を5%効率化したとする。製造部門もAIを導入し、作業時間を5%短縮した。
数字だけを見れば、どちらも成功である。
だが、新しい設計図面やデータが、製造部門で扱いにくく、手戻りを増やしていたらどうだろう。
設計部門と製造部門のKPIは改善している。それでも、受注から納品までの時間は、むしろ長くなる可能性がある。
問題は、部門ごとにDXを行うことではない。部門ごとの成果だけを見て、会社全体の流れを見なくなることだ。
このように、日本のエンタープライズ企業の大半は、役割“分担”ではなく、組織が“分断”する構図になりやすい。
成長のための“分業”は、なぜ“分断”に変わるのか
創業期の企業では、経営者と現場の距離が近く、役割の境界も曖昧である。
営業担当者が経理を手伝い、経営者が顧客対応をすることも珍しくない。
我々はこのような組織構造を「文鎮型」と呼んでいる(図2左)。
全員が「会社を成長させる」という目的を共有しているため、専門外の仕事にも自然に手を伸ばせる。
しかし、事業が拡大すると、営業、開発、製造、経理、ITと役割が分かれていく。
さらに各部門に予算やKPIが設定されれば、メンバーは会社全体よりも、自部門の成果に集中するようになる。
こうして、成長のために始めた“分業”が、やがて組織の“分断”へと変わっていく。
分業そのものが悪いわけではない。大企業が専門性を高め、安定的に成果を出すためには、役割分担が欠かせない。
問題は、仕事だけでなく、目指す方向や課題認識、判断基準まで分けてしまうことだ。
体は分けてもいい。だが、頭まで分けてはいけない。
組織が大きくなるほど動けなくなるのは、分業しているからではない。経営・事業・ITの「頭」がつながっていないからである。
では、頭をつなぐために、DX推進室のような横断組織をつくればよいのか。
実は、そこにも落とし穴がある。






