DX推進室をつくっても、変革が進まない理由

DXに取り組む企業でよく見られるのが、「DX推進室」のような横断組織の設置である。

DX推進室をつくること自体が悪いわけではない。
問題は、事業部門の優先順位や評価指標を変えないまま、推進室に変革の責任だけを負わせることだ。

実際に業務を変えるのは、日々その業務を担っている事業部門である。現場の使い手が主体にならなければ、新しいシステムや業務プロセスは定着しない。

ところが、多くの企業では、事業部門に従来どおりの売上や利益の達成を求めながら、同時にDX推進室への協力も求める。

これでは、現場にとってDXは「余力があれば取り組む追加業務」になってしまう。

経営も、事業部門に売り上げや利益の達成を求めながら、改革へ人や時間を割くよう求めるのは難しい。そこで、変革を担う別組織として「DX推進室」を設ける。

しかし、問題は推進室がなかったことではない。

実際に業務を変える事業部門が、変革の主体になっていないことなのである。これがセンターピンであり、本質だ。

「箱」をつくっても、分断は消えない

横断組織をつくれば、既存の分断が自動的に解消するわけではない。

むしろ、権限や役割が曖昧なままDX推進室を設けると、事業部門やIT部門との間に、新たな分断を生み出してしまう可能性がある(図3)。

推進室の設置が決まると、経営は各部門から中核人材を集めようとする。

しかし、業績責任を負う部門ほど、重要な人材を手放しにくい。

その結果、推進室には十分な権限や、現場での影響力を持つ人材が集まりにくくなる。意欲のある人材が参加しても、各部門の優先順位が変わらなければ、組織の間で孤立し、改革を前へ進められなくなる。

たとえエース級の人材が集まっても、経営による優先順位の変更や権限移譲がなければ、組織を新設しただけで終わる。

必要なのは、新しい組織をつくることではない。
経営・事業・ITをつなぐ人と仕組みをつくることである。

経営が変革の優先順位を明確にし、事業部門が課題のオーナーとなり、IT部門が実装と運用を支える。この三者が同じ目的と判断基準を持って初めて、DXは現場の変化につながる。

組織図に新しい箱を一つ加えるだけでは、分断は消えない。
必要なのは、経営・事業・ITの「頭」をつなぐことである。