「任せる」チームは
本当に成果が出るのか

 論文には「指示型リーダーに率いられたチームは、権限委譲型リーダーに率いられたチームを当初は上回った」とある。原文の「teams led by a directive leader initially outperform those led by an empowering leader」の日本語訳である。

 これは妙に現実的な結果だ。仕事をよく知る人が「これをやれ」「次はこれだ」と決めれば、立ち上がりは速い。新人同士で相談させれば時間がかかるし、間違いも増える。「自分でやった方が早い」という管理職の感覚は、少なくともこの実験では間違っていなかった。

 だが、研究はそこで終わらない。時間がたつと、権限委譲型のチームの方が大きく伸びた。論文は、「初期の成果は低かったにもかかわらず、権限委譲型リーダーに率いられたチームは、チーム学習、連携、エンパワーメント、メンタルモデルの形成がより高かったため、時間とともに成果をより大きく改善した」と説明している。これも論文原文の日本語訳である。

 最初は遅い。相談する。失敗する。やり直す。その一見無駄に見える時間の中で、自分たちで判断する力が育っていく。

「任せる」チームが時間とともに
成果を大きく改善したワケ

 ここで「では、最初は指示して、途中から任せればいい」という結論を出したくなる。だが、この研究は途中でリーダーシップの型を切り替える方法を実験したものではない。

 権限委譲型のチームは実験の最初からメンバー自身の意思決定や意見交換を促され、試行錯誤を重ねていた。そうした過程でチーム学習や連携が進み、その後の成果の伸びにつながったと研究者たちは考察している。しかも対象は企業で長年働く社員ではなく、大学生300人を5人ずつに分けた3時間のシミュレーションである。稲盛流を実証した研究ではない。

 一方の稲盛は、人を育てるときにもっと荒っぽいことをしている。

 海外進出や新規事業では、本社のナンバー2やナンバー3を残し、自分が前線へ出た。そのとき連れていったのは、社内で一番優秀な社員ではない。「本社ではまだ活躍できていない、そうした『半端者』たちを集めて新しい市場に攻めていきました」。自ら「半端もん戦法」と呼んでいる。