
吾郎さんらしい
もしかして吾郎が帰ってきたと思わせて――違う人だった。軍人の声を聞き、直美が玄関先に出る。
ここは「一ノ瀬」家だが、軍人は、出てきた人(直美)にいきなり「小川直美さんでいらっしゃいますか?」と訊く。手紙を書くときも、一ノ瀬家付、小川直美様だと思うのだが。
連隊から来た、と言ったから、そこで対応するのは軍人と関係ある直美、という合理的な考えであろうか。なんて、ドラマ小姑チェックをしている場合ではない。
ドラマ開始から8分が過ぎたころ、吾郎の死亡が報告された。
雷ゴロゴロ。
台湾での戦闘中に、岩場から落ちて負傷。広島の病院で死亡。華々しい戦闘の末というわけでもないところが、なかなか衝撃的な展開だ。衝撃的なのに、あっけない。
遺品を渡される直美。ただ深くお辞儀するしかない。
「ご苦労さまでございました」
視聴者も言葉もない。
直美はただただ呆然とした顔をしている。何がなんだかわからない、思考回路がショート寸前、といった表情が見事な上坂樹里。そこへ明の激しい泣き声がして、本能的にあやしに向かう。縁側で静かにあやしている。あやし方もうまい上坂樹里。
心配そうにそっと近づくりんに、「戦争終わったのに、死んじゃうなんてある?そんなこと」と言いながら、「……あるか。吾郎さんらしい」とまだ泣けないでいる直美。
ほんとうにショックなとき、すぐに泣けないことってある。
遺品の入った風呂敷をほどくと、なかには薄汚れた軍服と帽子が入っていた。また第2ボタンがとれている。
「あんなにギュウギュウにぬいつけたのに、なんで?」
それを赤ちゃんがぼーっと見ている。ふと目線を外すタイミングも絶妙だ。上坂樹里も巧いが、この赤ちゃんも名演技。将来、名子役になるかもしれない。







