心が動いた瞬間の言葉は、AIには書けない
最近は学生から、「お礼メールもAIに作ってもらいました」という話を聞くことがあります。文章としては申し分ありません。丁寧で、失礼もありません。でも、どこか物足りなさを感じることがあります。それは、その人自身の実感が伝わってこないからです。
例えば、「本日はありがとうございました」だけで終わるのではなく、「○○のお話を伺い、自分の固定観念に気づきました」「『失敗を恐れなくていい』というお言葉を、これから就職活動で思い出したいと思います」
こんな一文が入るだけで、その人だけの言葉になります。
AIは文章を整えてくれます。しかし、心が動いた瞬間までは書いてくれません。
そこは、自分自身でしか表現できないのです。
「ありがとう」が、伝える側の心を育てていく
企業で研修を行っていると、「部下をもっと主体的に動かしたい」という相談をよく受けます。そのとき、私は、「ありがとうの伝え方を変えてみませんか」とお話しします。
「助かったよ」
「君のおかげで安心できた」
「細かな確認をしてくれたから、お客様に喜んでいただけたよ」
こうした具体的な感謝は、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感につながります。人は評価だけでは育ちません。感謝されることで、自分の存在価値を感じ、自信を持ちます。そして、その自信が次の挑戦につながっていくのです。
感謝は、相手のために伝えるものだと思われがちですが、実は一番豊かになるのは伝える側です。人の脳は主語を認識しないと言われています。相手に「ありがとう」を口にすると、自分が感謝されたように認識し、不思議と相手の良いところに目が向くようになります。
人の欠点ではなく、支えてくれていることに気づけるようになります。だから私は、感謝は人間関係を円滑にする手段であると同時に、自分自身の心を育てる習慣でもあると思っています。
AIがますます進化するこれからの時代。便利さを享受しながらも、「ありがとう」だけは、自分自身の言葉で届けたい。その一言に、その人らしさが宿り、その人にしか伝えられない温もりが生まれるからです。









