「感謝」は大きなことをする必要はない

 私自身にも、今でも忘れられない出来事があります。

 NHKでテレビの仕事をしていた頃のことです。

 ニュースや情報番組は、ディレクター、カメラマン、音声、照明、美術、編集、技術スタッフなど、多くのスタッフの力で成り立っています。

 ある日、生放送が終わったあと、技術スタッフの方がこんなことを言ってくださいました。

「牛窪さんは、毎回、必ず私たちにも『ありがとうございました』と言って帰りますよね。そう言ってもらえると本当にうれしいです」

 私は少し驚きました。私にとっては当たり前のことだったからです。でも、その方は続けました。

「出演者から声を掛けてもらえることは意外と少ないんです」

 私はそのとき、感謝は大きなことをする必要はないのだと改めて思いました。

 ほんの一言でも、人は感じてくれる。そして、その積み重ねが信頼関係をつくっていくのだと学びました。

「結果」ではなく、「存在」に感謝していく

 仕事では、成果を上げた人に感謝を伝えることはよくあります。

「契約を取ってくれてありがとう」

「資料を作ってくれてありがとう」

 もちろん、それも大切です。でも私は、それ以上に「いてくれてありがとう」という感謝を意識しています。

「いつも明るく挨拶してくれてありがとう」

「会議の場を和ませてくれてありがとう」

「細かなところまで気を配ってくれて助かっています」

 こうした言葉は、その人の存在そのものを認めています。成果だけを評価される職場では、人は疲れてしまいます。だからこそ、日々の行動や姿勢に目を向けた感謝が、組織の空気を変えていくのです。