開発初期段階の構想に自然なカタチで変化が生じた
一つ目は、「なぜ、トライトンベースのPPVではないのか?」という点だ。
時計の針を少し戻すと、24年の「第45回バンコク国際モーターショー」を現地取材した際、三菱自のタイ生産拠点であるMMTh(三菱モーターズタイランド)を訪問するなどしてタイ現地の三菱自幹部らと意見交換した。
新型パジェロの可能性についても話を聞いたところ、「もちろんグローバル市場からは要望する声が多くあり、導入を検討する価値はある。ただし、需要を的確に把握する必要があり、まだはっきりとしたことが言える状況にない」という回答だった。
ピックアップトラック「トライトン」がベースとなる、PPVになるのかという問いに対しても、「それもまだ分からない」とのことだった。
新型「パジェロ」の生産を行う予定のMMTh(三菱モーターズタイランド)でのプレゼンの様子。24年3月取材時 Photo by Kenji Momota
これは、今回の新型パジェロ発表の約2年半前のことであり、まさに三菱自では新型パジェロの商品企画が本格化しようとしていた時期だったといえる。
また「PPVになるのか分からない」という当時の回答は三菱自の本音だったことが、今になって分かった。
新型パジェロの商品企画とデザインの関係者は「当初、トライトンベースのPPVとして企画された」ことを明らかにしたからだ。
PPV市場での競合他社の動きを見れば、トヨタが「ハイラックス」ベースの「フォーチュナー」、いすゞが「D-MAX」ベースの「MU-X」で市場から強い支持を得ている。三菱自にもトライトンをベースとした「パジェロスポーツ」がある。
そうなると、新型パジェロとパジェロスポーツとの差別化が難しく、次期パジェロスポーツを日本ではパジェロとして販売するのではないか、という予想を立てるメディアもいた。
ところが、三菱自の社内で新型パジェロの協議を進める中で「(新型パジェロに対する)われわれのエネルギーが変わってきた。本物をつくりたいとの思いが強まった」(三菱自関係者)というのだ。
また「20年代になってから社内が活発化し、われわれがやりたいことの方向性が明確になってきた」(同)とも指摘する。
中長期ビジョンで三菱自が指摘している「尖(とが)った商品・ブランドの強化によるお客様満足と企業価値の向上」という方針が新型パジェロ開発の推進力になったわけだ。
その上で、クルマの骨格であるラダーフレームはトライトン向けをベースにしつつも新型パジェロ専用開発とし、高いねじり剛性を確保することにより堅牢(けんろう)性と高い走行安定性を実現した。
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアは本格的クロスカントリーとしての悪路走破性とSUVとしての乗り心地を両立させるため5リンク式リジッド方式を新開発した。
エンジンはトライトン用をベースとした新世代ディーゼルエンジンに8速スポーツモード付きATを組み合わせ、スーパーセレクト4WD-IIで後輪駆動の2H、四輪駆動の4H、さらにセンターデファレンシャルギアをロックさせた4HLcと4LLcをドライバーが任意で選択できる。四輪制御技術はS-AWC(スーパー オール・ホイール・コントロール)を熟成させた。
ドライブモードは、ECO、NORMAL、GRAVEL、SNOW、MUD、SAND、そしてROCKで合計7パターンを設定し、世界のさまざまな走行シーンを網羅した。
このように、新型パジェロはトライトンで培った技術を最大限に活かしながら、新型パジェロ専用設計をふんだんに盛り込んだ意欲作である。
新型「パジェロ」のサスペンションに関する説明資料 写真提供:三菱自動車工業







