―――国内で卸をとばして直接販売する「中抜き」は難しいですが、海外では可能なのですか。
桜井 海外で中抜きするのは、日本よりもっと難しいです。国が現地の業者を保護するために、たとえば1社としか付き合えない等の条件もさまざまありますし、現地の法律を調べるにもひと苦労しますしね。
ですから物理的に「中抜き」をやるのでなく、レストランや個人のお客様に対して獺祭に関する情報をどんどん直接流していって、お客様側の要望が高まることで結果として卸売りの姿勢が改善される状況に持ち込みたい。売れる物を売りたいと考えるのはどこも同じですから、そうなると強いですよね。
―――その直営の飲食店ですが、ブランド構築のためには、欧米への出店が先行しますか。
桜井 そうですね。出るとしたら、ニューヨークかパリか、フラッグシップになるところへ、まずは出店します。そこで評価を得られれば、自然と世界へ伝搬しますから。中国の富裕層マーケットも、将来的には視野に入っていますが、今のところはラスベガスなど中国の富裕層が出てくる欧米へ行ったほうが効率的かなと思います。
日本人が喜んでヌーボーを飲むように、海外では高価格帯で勝機あり
―――欧米となると、為替の関係で割高感が出ますが、ハードルになりませんか。
まあハードルですけど、気にしても仕方ないですよね。日本人も、フランスなら300円のボジョレー・ヌーボーを3000円出して喜んで飲むのだから(笑)、やりようではないでしょうか。
仮に、アメリカ・サンフランシスコ郊外のナパバレーに酒蔵をたてて、日本の米の20分の1ぐらい安いカリフォルニア米でつくったとしても、ワインより絶対高くなるんです。酒は米のデンプン質を麹でブドウ糖に変換して、さらに発酵させる手間がかかるので、ワインのようにブドウをつぶしたら最初から発酵が始まるのと比べると原価で勝負にならない。だから、日本酒業界は、世界では高価格帯を狙うほかないと思います。
*後編(8/9公開)に続きます