中国不動産を襲う「2つの新たな危機」

 中国不動産には恒大とは別の新たな問題が浮上している。オフィスビル、ショッピングモール、倉庫などの非住宅不動産が抱える「土地使用権」の問題である。

 中国の都市部の土地は原則として国家所有であり、企業や個人が購入するのは期限付きの「建設用地使用権」とその上の建物である。日本で言えば定期借地権付き不動産に似た制度だ。

 土地使用権の最長期間は、住宅用地が70年、商業・観光・娯楽用地が40年、工業用地や「総合・その他」の用地が50年と定められている。

 ここで問題になっているのが、1990年代から開発されたオフィスや商業施設だ。不動産大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの推計では、残存期間が20年以下となった非住宅不動産は、すでに1兆元、約1480億ドル(約23.7兆円)規模に達している。

 また、不動産大手CBREは、18主要都市だけで2030年までに残存20年未満のオフィス・商業施設が約3000万平方メートルに達すると推計する。これは単独所有物件だけの数字で、実際の規模はさらに膨らむ可能性がある。

 恒大問題と土地使用権問題を並べると、中国不動産危機には二つの顔があることがわかる。

 一つは、企業にカネが回らなくなる「フローの危機」。もう一つは、保有する不動産そのものの評価額が下がる「ストックの危機」である。

恒大判決が中国の経営者を萎縮させるワケ

 恒大判決について、「これで中国企業は資金調達ができなくなる」と考えるのは正確ではない。増資、資産売却、債務再編、追加融資そのものは犯罪ではない。問題は別のところにある。

 中国の不動産開発は長年、地方政府が土地を供給し、デベロッパーが土地を購入し、金融機関が大量の資金を供給することで拡大してきた。土地価格が上昇する限り、この仕組みはすべての参加者に利益をもたらす。

 地方政府には巨額の土地売却収入が入り、デベロッパーは開発を続けられ、銀行にとっても土地と建物は担保になる。だからこそ、企業が一時的な資金難に陥っても、地方政府や金融機関との関係を使って危機を先送りできた。

 恒大判決が突きつけたのは、その中で行われてきた不透明な資金移動や金融機関との癒着が、後から重大犯罪として追及される可能性である。

 重要なのは、裁判所が罪状としたのが、地方政府や金融機関を巻き込んで資金を回すという、中国の大企業が当たり前に用いてきた金策の作法だったことだ。その作法と無縁で大きくなれた中国企業など存在しない。