だとすれば、経営者が直面するのは、「これから何か新しい違法行為に手を染めれば罰せられる」という話でなく、「自分がこれまで歩んできた道そのものが、いつでも犯罪にされてしまう」という恐怖である。
前者なら慎重に振る舞えば逃れられる。だが後者は、過去そのものが人質に取られているのだから、逃げ場がない。
これは経営者だけの問題ではない。金融機関側も「問題企業を支援した結果、後になって違法融資や贈収賄を問われるのではないか」と考えれば、リスクの高い企業への追加融資をためらう。危機に陥った企業は資金を調達できなくなる。
こうして経営者も金融機関も萎縮し、本来なら救えたはずの企業まで資金を絶たれていく。動けば過去の罪状を掘り起こされ、動かなければ資金が尽きる。恒大判決は、信用収縮をさらに悪化させる強烈なシグナルになりうるのである。
中国不動産ではすでに碧桂園など大手デベロッパーが債務再編を余儀なくされ、恒大に続いて多くの企業が資金繰り難に陥った。現在の危機は、一企業の経営失敗では説明できない。
「土地の使用期限」が不動産評価を困難に
もう一つのストックの危機は、土地使用権が期限に近づくほど不動産の評価を難しくする点にある。
仮に立派なオフィスビルが建っていても、その土地をあと10年しか使えないなら、50年使える物件と同じ価格では売れない。実際、多くの中国の銀行は、残存10年未満の物件について新規融資や借り換えに慎重になり、保険会社やデベロッパーの中には残存20年以上でなければ取引対象としないところもある。
すでに影響は出ている。北京では、土地使用権が10年未満となった部分を持つ大型商業施設の売却が難航している。シンガポール政府系テマセクが出資するキャピタランドの上場部門も、残存20年以下の中国不動産を200万平方メートル以上保有・管理しており、同社幹部が中国政府高官に問題を提起したと報じられた。
中国の土地制度の問題はすでに外国企業に飛び火している。
では土地使用権の期限が来たら、どうなるのか。住宅については、民法典359条で期限満了時に自動更新すると明記されている。ところが非住宅については「法律の規定に従って更新する」としか定められておらず、長年、全国統一された明確な更新期間・費用・手続きが存在してこなかった。







