経済財政諮問会議で発言する高市早苗首相経済財政諮問会議で発言する高市早苗首相=7月21日 Photo:SANKEI

日本に不足している「投資の物語」

 今年春頃からアメリカ企業の好決算をきっかけに、韓国、台湾、日本の半導体株が一斉に急騰した。現在はAIのマネタイズへの懸念などから伸び悩んでいるが、株式市場はおおむね好調を続けている。

 この動きが改めて示したのは、現代の資本市場では企業の個別業績だけでなく、「AI投資はこれからも拡大する」「半導体需要は長期的に伸びる」という共通の投資テーマが、巨額の資金を動かしているという現実である。

 アメリカの「マグニフィセント7」はその象徴だ。重要なのは7社そのものではなく、AI、クラウド、半導体など「次に伸びる市場」が投資家にわかりやすく提示されていることである。

 どれほど優れた技術や企業が存在しても、投資家に理解されず、資金が集まらなければ、その技術は量産にも海外展開にも進めない。日本に不足しているのは技術と企業と政策だけではない。それらを一つにつなぎ、投資家に「次にどこが伸びるのか」を示す投資の物語も不足している。

「何に投資すればよいか」を示せ

 日本では長らく「貯金すること」が美徳とされてきた。子供がお年玉をもらえば、親は「無駄遣いせずに貯金しなさい」と教えた。銀行に預けておけば元本は守られ、利息も付いた。長年続いたデフレ下では、現金の購買力もほとんど低下しなかった。

 個人にとって、貯蓄は合理的な選択だった。だが、国民全体が支出と投資を控え、企業まで内部留保を積み上げれば、国内需要も設備投資も伸びない。貯蓄は個人の安全を守る一方、その資金が国内の消費や投資に十分回らなければ、経済成長を抑える要因にもなり得る。

 2026年3月末時点で、日本の家計金融資産は2386兆円に達している。そのうち現金・預金は1126兆円、全体の47.2%を占める。一方、投資信託は6.9%、株式などは16.7%にとどまる。
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

 政府は長年、「貯蓄から投資へ」と訴え、NISAという画期的な制度も作った。だが、NISAを通じた個人の投資資金は、オルカン(全世界株式)やS&P500など海外株式を組み入れた商品にも向かっている。「とりあえずオルカンを買っておけば平均点は取れる」という選択は、たしかに合理的かもしれない。

 しかし、日本の産業育成という観点から重要なのは、「日本株を買え」と国民に迫ることではない。海外株と比較しても投資対象として魅力のある日本企業や成長市場を、国内外の投資家に示せる環境をつくることである。

 政府が本気で、2040年度までに官民合わせて370兆円超の国内投資を想定する次世代産業政策を進めるのであれば、そこには日本株全体とは異なる成長機会が生まれる可能性がある。問題は、その機会が投資家にとって見えやすい形になっているかどうかだ。

 日本の投資をめぐる問題の一つは、「日本のどの産業が伸びるのか」「どの企業が世界市場を取り得るのか」が十分に見えていないことにある。日本株に乗るための「投資テーマ」という武器を十分に活用できていないのである。