恒大清算でも危機は終わらない、中国不動産に残された「決定的な問題」
ここまで見れば、恒大判決と土地使用権問題は、まったく別の出来事ではないことがわかる。両方とも、中国が長年依存してきた一つの経済モデルから生まれた問題だからである。
地方政府が土地を売る。デベロッパーが借金をして土地を買う。銀行が融資する。住宅価格が上がる。地方政府の土地収入が増える。増えた収入でさらに都市開発を進める――中国経済は長年、この巨大な循環で成長してきた。
問題は、すべてが「不動産価格は上がり続ける」という前提だったことだ。価格が下がれば、デベロッパーは借金を返せず、担保価値が下がれば銀行も融資できず、土地が売れなければ地方財政が悪化する。商業不動産では土地使用権の期限が近づき、担保価値がさらに落ちる。
習近平政権の経済運営には一つの特徴がある。「腐敗さえなくせば経済は自ずと健全になる」という信念のもとに、現実的な政策が疎かになりがちなことだ(このあたりの詳しいことは、拙著『習近平は何を恐れているのか?』(ビジネス社)に詳しく記したのでご参照いただきたい)。
恒大がこれほどの負債を背負ったのは、地方政府・不動産業者・地方銀行という三位一体の癒着があったからである。とくにこの「地方政府」には、多分に「中国共産党」の要素が含まれる。
習が「個人の犯罪」にこだわるのは、このシステムの根幹である「中国共産党」の部分を無視しているからだ。実質的な習近平独裁に入った現在、その部分の非を認めれば、責任が自分にかかってくる。
だからこそ習は経営者個人の責任ばかりを追及し、システム自体には手を付けない。その結果、「経営者狩り」と「粛清」ばかりを追求して、優秀な経営者を追放し、活動中の経営者たちの手足を縛り続けている。
土地使用権問題についても、中央政府が商業不動産の更新について全国共通ルールを決めるのが効果的だが、それは「地方政府の裁量に任せる」という既存システムの否定になり、問題を放置してきた自分の責任を認めることになる。
中国経済を立て直すには、産業界と中国共産党の癒着をなくし、制度を刷新する必要がある。無理な成長目標をやめ、土地売却収入に依存する地方財政を改め、地方政府・企業・金融機関の不透明な関係を整理し、非住宅土地使用権の更新ルールを全国で明確化し、価格上昇なしでも企業と地方政府が存続できる制度を作ることだ。
恒大問題が示したのは、不動産バブル崩壊による「フローの危機」である。そして土地使用権問題が示しているのは、不動産そのものの価値を揺るがす「ストックの危機」だ。人を罰することはできても、制度が生み出したリスクまでは消えない。
中国不動産市場は経済成長モデルそのものの見直しを迫っているが、習近平指導部に低成長を受け入れる様子は見えない。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)







