不動産投資では、20年後、30年後にその資産がいくらになるかを想定して現在価格を決める。だが「更新できるのか」「何年延長できるのか」「更新料はいくらか」が明確でなければ、鑑定士も銀行も投資家も将来価値を計算できない。わからないものには「リスクプレミアム」が乗り、期限が切れる前から価格が下がるのである。
ところが、香港では期限後に50年間延長し毎年地代を支払うという明確な制度があり、投資家は将来負担を計算できる。
中国本土でも2026年にようやく動き出し、広州に続いて上海が更新ガイドラインを示し、両都市では基準額の少なくとも70%を更新費用とする案が出た。しかし依然として全国統一ルールはなく、いつから申請できるのかといった基準も明確ではない。
地方政府を救えば不動産が下がる?中国政府を悩ませるジレンマ
なぜ中国政府は、もっと早く全国共通のルールを作らなかったのか。最大の理由は、この問題が地方政府の財政と直結しているからだ。
中国の地方政府は長年、国有地の使用権を売却して巨額の財源を得てきた。不動産価格が上昇すれば土地も高く売れ、高い土地を買ったデベロッパーは施設を建て、その土地を担保にさらに融資を受ける。この循環が高度成長を支えてきた。
ところがバブルが崩れると逆回転する。2026年上半期の土地売却収入は前年同期比31.5%減の9778億元(約23兆円)まで落ち込んだ。
ここに更新問題が加わる。更新料を安くすれば所有者の負担は減り資産価格を支えられるが、地方政府の収入は減る。逆に高くすれば地方政府にはカネが入るが、その将来負担を投資家は不動産価格から差し引く。つまり「不動産価格を守ること」と「地方財政を守ること」が両立しない――これが土地使用権問題の本質である。
しかも、商業不動産自体がすでに深刻な不況にある。CBREによると、2025年第4四半期の主要都市の平均オフィス空室率は24.7%、賃料も年間で10.4%下落した。借り手が減り賃料が下がるところへ、土地使用権の期限が重なってきたのである。







