同じ種類の動画を見続けると
「そればかりのものに」
次々に短い動画が流れるショート動画も「ちょこちょこ見てます」。この話だけなら、流行好きな経営者である。
私が耳を止めたのは、その後だった。
豊田は、同じ種類の動画を見続けると「そればかりのものになっちゃう」と話す。おすすめ欄が便利になるほど、目に入る世界は狭くなる。そのことをよく認識しているのだ。
YouTubeのおすすめに並ぶのは、「世間で何が流行っているか」より、「このアカウントが最近何を見たか」に近い。YouTube公式ヘルプの「YouTubeのおすすめ動画の仕組み」には、トップページでは主に再生履歴が使われ、検索履歴も今後のおすすめに反映されるとある。車ばかり見れば車が増え、料理を見れば料理が増える。おすすめ欄に映るのは、世間よりも過去の自分だ。
この仕組みは、探す手間を省き、好きなものを次々に出してくれる。同時に、画面が自分向けになるほど、そこに出ていない話題の存在を忘れやすくなる。豊田が警戒した「そればかり」は、この便利さの裏側にある。
研究が示した
「おすすめ」の力
この点を確かめたのが、Xudong Yuらが2024年に学術誌「PNAS Nexus」で発表した「推薦アルゴリズムへの働きかけは、YouTubeでのニュース視聴と情報の多様性を増やす」である。
研究チームは8600の模擬アカウントを用いた実験に加え、YouTubeをよく使う2142人を対象に1カ月間、参加者をランダムに分けて実験を行った。
信頼でき、政治的な偏りの少ないニュース動画を裏で自動再生し、履歴へ入れる。すると、ニュースがおすすめされる量も、実際に見る量も増えた。自動再生を止めた後にも影響は残った。おすすめが視聴を動かす力は、視聴が次のおすすめを動かす力より強かった。
実験の対象は米国のニュース視聴で、動画は自動再生だった。豊田と重なるのは、履歴がその後に触れる情報を変える点である。
集めた情報の使い方も面白い。番組で豊田は、インドネシアの「ボート少年」とサカナクションの話をした。
細長いボートを大勢がこぎ、その先頭で少年が腕を振りながら調子を取る。この映像にサカナクションの「夜の踊り子」を重ねた短い動画が、ネット上で広がった。映像や動きを別の人がまねし、作り替えていく「ミーム」である。







