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『サザエさん』の作者・長谷川町子さんのもとには、かつて「世田谷区フグ田サザエ様」という宛名でも手紙が届いたという。現在はかなり難しそうだが、なぜ昔は“ゆるい住所”で手紙を届けることができたのか。普段何気なく使っている「住所」の成り立ちと変遷をたどる。※本稿は、地図エンジニアの河合太郎『ヤバい日本の住所』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
そもそも「住所」とは何?
意外とシンプルな法律上の定義
そもそも住所とは何でしょう。普段は何気なく使っている言葉ですが、筆者自身、この文章を書き始めるまでその意味について深く考えたことはありませんでした。一体、どのように定義すればよいのでしょうか。
さまざまな約束ごとの取り決めといえば法律ですが、我が国の民法の第22条にはこう書かれています。
この一文は、「その人が生活の拠点としている場所を住所とみなす」という考えを示しているだけで、住所そのものの仕組みについては何も言及していません。つまり住所とは、字面そのままに「人が住んでいる場所」を表す言葉であり、広く認知されている当たり前の概念として法律でも扱われているということです。詳細な仕組みがあるのはその先の、では住所をどう書き表すかという部分であり、この「住所を書き表したもの」を正しくは「住所表記」と言います。
我々が普段「住所」としてやり取りしているのはこちらの方です。
でもどうしても堅苦しい感じになりますし、実際、日常生活で「君の住所の住所表記を教えてよ!」なんて言う人はいなくて、皆シンプルに「君の住所を教えてよ!」と言っているわけですから、本稿でも住所=住所表記として話を進めることにします。
なお、建物や会社についてもよく「あのビルの住所は」や「×××株式会社の住所は」といった書かれ方をしますが、これらは厳密に言えば正しくありません。住所はあくまで「人が住んでいる場所」であるので、建物や法人については住所ではなく所在地が適切な表現になります。
ただこれもややこしい部分があって、所在地はもともと不動産登記において不動産の存在する場所を意味する言葉です。つまり土地を指す概念であるので、所在地の表記にはそこに建っている建物や、建物の中の部屋の情報を含めるのは適切ではありません。
ところが実際には、登記上の一つの土地の上に複数のビルが建っていることもあれば、そのビルの中でそれぞれの部屋に別々の会社が入居している場合もあります。小さな法人であればなおさらよくある例でしょう(×××ビル302号室、など)。
こうなると、「法人に住所を使うのは適切ではないが、所在地表記では十分に特定できない」という事態が起こり得てしまいます。こういう事情もあり、また読む際にも複雑になるので、本稿では住所あるいは所在地をまとめて住所と称することにしたいと思います。







