Photo by Koji Yuasa
車載用スピーカーで世界シェアトップの音響機器メーカー、フォスター電機が異例の決断を下した。議決権の約25%を保有するアクティビスト、アクシウム・キャピタルの門田泰人最高経営責任者を社外取締役に迎え入れ、中期経営計画を共同で策定するというのだ。対立構図で見られがちな企業とアクティビストはなぜ手を組んだのか。両者の中計策定のプロセスを追う特集『協奏の賭け アクティビストは敵か味方か』の本稿では、フォスター電機の岸和宏社長にその真意を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
音響メーカーがアクティビストと中計策定へ
「最初は身構えた」が、同じ船に乗る当事者
――アクティビストのアクシウム・キャピタルと共同で中期経営計画の策定を進めています。協調に至った決め手は何だったのでしょうか。
昨年9月、最初のアクシウムとの面談で衝撃を受けました。フォスター電機や業界、競合企業を実によく勉強していました。正直、最初は身構えていましたが、会ってみると想像と違って、謙虚で真面目なプロフェッショナル集団という印象を受けました。当初予定していた1時間半を超え、2時間以上も課題を話し合いました。
その後にもらった提案書は、私たちが日頃から改善すべきと考えていた課題とほぼ一致していました。上から目線の押し付けではなく、「私たちはこう分析しますが、社長はどう思いますか」と聞いてくれた。中長期で会社を良くしたいという思いが一致し、自然な形で一緒にやろうと決めました。
――アクティビストは短期的に会社を切り売りしてでも株主還元を要求し、売り抜けるイメージがあります。アクシウムが投資期限のない「オープンエンド」を掲げていることも大きかったのでしょうか。
極めて大きかったです。私は約1万5000人の従業員とその家族の生活を預かっています。もし短期的な利益のために「あれを切り売りしろ、これを整理して配当に回せ」と要求するファンドなら、絶対に取締役会に招きませんでした。
しかし、彼らの運用資金には償還の「締め切り」がありません。企業価値が向上し続ける限り、株式を持ち続けてサポートしてくれる。それなら「同じ船に乗る当事者」として一緒に山を登っていけると、腑に落ちました。
――新型コロナウイルス感染拡大期の営業赤字からV字回復を遂げ、足元の業績は順調です。なぜ、あえてアクティビストと組む判断をしたのでしょうか。
お互いの利害が一致している間は、共存共栄は成り立ち得る。しかし、ものづくりと資本の論理はぶつかることもあるだろう。まして、足元の業績は決して悪くないフォスター電機が大胆な選択をした理由はなぜか。次ページでは、中国メーカーとの過酷な競争や、プロパー社員として40年勤めてきた岸社長が抱いている危機感に迫る。また、今回手を組んだアクティビストは経営コンサルと違って信用できる、と明かす。その発言の真意とは。







