元国税調査官の千葉文男税理士によると「開かずの金庫」は相続税調査の現場で「定番とも言える」と言う(写真はイメージです) Photo:PIXTA
相続税の税務調査(以下、実地調査)とは、決して楽な調査ではありません。現地に入る前に、調査官たちは緻密(ちみつ)に準備調査を重ねて想定問答を繰り返しており、その上で現場に足を運んでいます。そして、当日調査官を待ち受けているのは驚きの「人間ドラマ」でした。長年にわたり相続税調査の最前線に立ち、数々の現場を経験してきた元国税調査官の千葉文男税理士へのインタビューを通して税務調査の現場で実際に起きた驚きの事例と、資産をめぐる人間ドラマについて紹介します。(聞き手/岩田いく実)
実地調査はまさに「人間ドラマ」
くしゃくしゃの「聖徳太子」が物語る歳月
――30年を超える国税調査官の経験の中で、調査時に印象に残っているお話をぜひお聞かせください。
家具や家電の中、マットレスの下など、現金が隠されていた場所にはいろんなケースがあるのですが、個人的にとても印象に残っているのは「段ボール箱いっぱいの現金」のケースです。通常、金融機関から引き出した現金を隠している場合は帯封が巻かれて整然と重ねられていることが多いものです。
しかし、その段ボール箱に詰め込まれていたのは、綺麗(きれい)に束ねられたお札ではなく、使い古されてくしゃくしゃとなったお札を一枚一枚投げ込まれていた状態でした。箱の底までびっしりと無造作に押し込まれていた。お札独特のにおいもある。今ではほとんど見かけることのない旧紙幣――いわゆる「聖徳太子の一万円札」が何枚も混ざっていました。
綺麗(きれい)に保管するのではなく、生活費で余った現金など、とにかく手元にあった現金を少しずつ、長年にわたってその箱に放り込んでいたのでしょう。聖徳太子の顔が現れた瞬間に数十年という膨大な歳月をかけて、家族にも内緒でコツコツとお金を貯め込んできた歴史が垣間見えました。
大量の現金が発見された時
実際には何が行われるのか
――このような大量の現金が発見された際、現場ではどのように処理されるのでしょうか。
テレビドラマなどでは、調査官が白い手袋をして手際よく札束を数えるシーンが描かれがちですが、現実のルールは異なります。







