こちらを見る男性写真はイメージです Photo:PIXTA

相続税の税務調査のうち、調査官が自宅などを訪れる実地調査は家中を探し回られ、現金の使途を厳しく問い詰められる場面を想像しがちです。しかし実際には、ほがらかに会話するところから始まります。調査対象者となった相続人からすると、相続税申告と無縁のやり取りに思えますが、そこには明確な狙いがあるそうです。長年、相続税の調査官として相続税の実地調査に携わってきた千葉文男税理士に、実地調査で行われる「意外な質問」について聞きました。(聞き手/岩田いく実)

「今日は暑いですね」
他愛ない会話から始まる実地調査

――相続税の実地調査は、あらかじめ通知の上で伺い、午前中はご家族と多くの会話をするそうですね。実際にはどのような会話を交わすのでしょうか。

 実地調査が入る、ということはご家族からすると「相続税申告について、何かしら疑われている」と警戒している状態です。そのため、午前中は家族と自然に会話することを心掛けています。

 いきなりタンスの引き出しを開けろ、通帳を見せろという乱暴なことはしません。警戒されている状況では核心的な質問をしても、相手は言葉を選び、必要最低限の受け答えしかしてくれないですから。

 一例として「今日は暑いですね」「天気が優れないですね」など、調査官は他愛ない会話を通してリラックスしてもらうために、天気の話から入ります。そこから、世間話をします。

「お子さんは何人いらっしゃるんですか」「お孫さんはいますか」。「奥さんはお仕事されているんですか」、といった当たり障りのない質問を重ねていく。人は自分や家族のことを話し出すと、次第に口が滑らかになっていくものです。