調査官は現場において現金や金地金(ゴールドバー)、貴金属などの現物資産に直接触れることは一切ありません。
これは「後から枚数が減った」「傷がついた」といった無用なトラブルや不正を防ぐためで、徹底されています。そのため、どれほど膨大な量であっても、現金のカウントは必ず納税者本人や立ち会っているご家族の手で行ってもらう必要があるのです。
しかし、段ボール箱いっぱいの「くしゃくしゃの旧札」をその場で、金融機関の職員でもないご家族自身が手作業で数えるとなると、数時間どころか丸一日かかっても終わらない可能性があります。納税者側の負担も非常に大きい。
このようなケースでは、「このまま金融機関の預金口座などに入金手続きをされたほうが安全ですし、正確ですよ」とお伝えします。ご遺族が納得された場合、ご遺族から取引されている金融機関に集金を依頼してもらい、訪問した行員の方に手早く正確にカウントしてもらったうえで、現金の預かり証を発行してもらい、その日のうちに確定した金額を調査記録に反映させます。
緊張が走る「開かずの金庫」
家族も知らないウラの顔
――資産をお持ちのご家庭では、開かずの金庫も多いそうですね。
相続税調査の現場で「定番」とも言えますね。自宅の奥や納戸に鎮座する「開かずの金庫」は、生前に金庫の存在自体をその他のご家族に秘密にしていることも少なくありません。
調査官がご家族に鍵の保管場所を尋ねても「どこに鍵があるのかも、中に何が入っているのかも誰も知りません」と返答されるケースもあります。
調査官はそのまま放置して帰宅するわけにはいきません。遺族から業者を手配し、その場で解錠作業を行います。作業員が特殊な工具を使ってダイヤルを合わせ、解錠を試みる数十分間――部屋の中には、独特の緊張感が漂います。ご家族にとっても「何を入れていたのか」が分からないため、息をのむような思いで作業を見守ることになります。
――では、実際に開いた金庫の中には何が入っているのでしょうか。







