現金、金地金が眠っている時もあれば、空っぽの時もあります。印象的だったのは古い不動産の権利証(登記済証)でした。しかも、そこに書かれていたのは被相続人の名義ではなく、全く別の名義の土地・建物の権利書でした。

 立ち会っていたご家族はそれを見た瞬間「えっ、うちの父がこんな場所の土地を持っていたんですか?なぜ他人の名義のまま……?」と困惑していましたね。

 詳しく調査を進めると、過去の複雑な親族間の売買や名義変更が絡み、登記上は別人の名義でも、実質的には被相続人の財産とみられる土地が含まれていることが分かりました。原野商法により買わされたりした土地など、ご家族が存在を知らなかった財産が見つかることもあります。金庫を開ける瞬間は、まさに被相続人のウラの顔と対面する瞬間なのです。

家族にはヒミツの資産の
隠し場所とは

 被相続人が生前に会社を経営していたオーナー社長であった場合、一般的なご家庭とは異なる特有の資産保管パターンも存在します。自宅ではなく、自社の金庫や社長室の引き出しなどへ個人のプライベート資産を隠すという手法です。

 ご家族に内緒で持っている現金や高級時計、有価証券などを、一番自分が自由にコントロールできる「会社」に持ち込んで保管しておくのです。

 自宅に置いておくと配偶者や子どもに見つかるリスクがありますが、社長室であれば家族が立ち入ることはめったにないため、絶好の隠し場所になってしまうわけです。申告においてもそのことを利用して財産を除外するケースも見受けられます。

本来は「財産」のはずが
遺族にとって大きな負担になるもの

――亡くなった方が、家族に知られたくないと必死に隠しているケースとして、他にどのような事例がありましたか。

 亡くなった後に友人への多額の貸付金が発覚することがありました。きっかけは、過去数年分の通帳履歴の精査です。

 企業や公的機関への振り込みに混ざって、特定の「個人名」宛てに数百万円単位の大きな金額が何度か振り込まれている履歴が見つかりました。ご家族に確認しても「そのお名前には心当たりがありません」という回答しか返ってきません。

 さらに詳しく関係者に聴取を行ったり、書斎の書類を確認した結果、被相続人が生前に困っていた友人に事業資金や生活資金として多額のお金を貸し付けていた事実(借用書)が判明しました。ここで実務上重要になるのが、「他人に貸したお金」の税務上の扱いです。

 税法上、被相続人が生前に他人に貸していたお金(貸付金・債権)は、「相続財産の一部」として評価され、相続税の課税対象になります。つまり、まだ手元に戻ってきていないお金であっても、原則としては「財産」として申告しなければならない。