2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
「波風が立たないこと」を優先してしまう
職場で「感じのいい人」はありがたい存在です。
相手が忙しそうなら話しかけるタイミングをずらす。
会議で空気が悪くなりそうなら、やわらかく言う。
頼まれごとは断らず、笑顔で引き受けてくれる。
周囲から見れば、気が利いて、付き合いやすく、協調性のある人でしょう。
ですが、そういう人ほど職場で消耗しやすいことがあります。
なぜなら、「自分はどうしたいか」より先に、「相手はどう感じるか」を考える癖がつきやすいからです。
本当は仕事が手いっぱいなのに、頼まれると引き受ける。本当はその案に懸念があるのに、場の流れを止めたくなくて「いいと思います」と答える。
一つひとつは些細なことです。
でも、それが毎日続くと、少しずつ自分が見えなくなっていきます。「どう振る舞えば波風が立たないか」が優先されるようになるからです。
仕事が集まるのはなぜか
しかも、「いい人」は周囲から頼られます。
断らない。嫌な顔をしない。調整してくれる。困ったときには助けてくれる。
すると、自然と仕事や気遣いがその人に集まっていきます。
本人も、「期待されているなら応えたい」と頑張る。
こうして、周囲にとっては働きやすい人であればあるほど、本人の負担は増えていきます。
組織は、人と人との組み合わせで機能するものです。
だから、「断られないから大丈夫」と相手を見ることをサボって押し付けてはいけない。
なぜ、この人にばかり仕事が集まるのか。この人なら引き受けてくれると思われているのか。
そこを見ると、個人の問題に見えていたものが、組織の関係性の問題として見えてきます。
いい人でいるより「自然体」でいられること
「いい人でいること」をやめる必要はありません。
でも、相手への配慮と、自分を消すことは違います。
頼まれたときに「今は難しいです」と言う。違うと思ったら意見を言う。疲れているときに、無理に明るく振る舞わない。
それだけでも、関係性は少し変わります。
そして、周囲も「何でもお願いしていいわけではないんだ」「こちらも調整しなければならない」と気づくのです。
本当に健全な組織は、誰か一人の気遣いによって保たれている組織ではありません。
お互いに違いがあり、苦手なことがあり、できないこともある。その凸凹を隠さずに持ち寄れる組織です。
いい人であることより、自然体でいられること。
長く働くうえでは、そのほうがずっと強いのです。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太