「地球の温度を1℃下げる」というミッション
F:東福寺さんが止めたにもかかわらず、中国トップが「やる」と決めた。そこまでしてBYDが軽をやりたかった理由はどこにあるのでしょう。
東:「日本で事業をやる以上、日本での事業規模を大きくしたい」という思いが根底にあります。台数も欲しいし規模も欲しい。ラインナップも拡充させたい。日本の自動車需要の3分の1以上を軽が占めています。そこへしっかりEVを入れていこうという考え方です。
さらにBYDという会社は「Cool the Earth by 1degree」、地球の温度を1℃下げようということをミッションとして掲げています。「Technological innovations for a better life」、技術革新を通じてより良い社会を作ろうという考えと合わせて、BEVとPHEVの新エネルギー車を普及させていく。日本でも同じことです。
F:地球の温度を1℃下げる。そんなミッションが……しかしずいぶん大きく出ましたね。
東:まあ、大それた話ではあるんですけど(笑)。さらに言えば、軽自動車とEVは非常に相性がいいんです。軽は一般的に1日の走行距離が40~50kmくらいの使われ方が多いので、それほど大きなバッテリーを積まなくても日常のニーズを賄えます。郊外や地方で使われるケースも多く、一戸建てで複数台所有という家庭なら、自宅に200Vの普通充電設備を設置してしまえば、帰宅してそのまま充電できる。軽とEVのマッチングは前々から非常にいいと考えていました。
中国の研究所に並んでいた、N-BOX、スペーシア、タント
F:なるほど。とはいえ、軽は特殊なクルマです。「やる」と決めるのと「造れる」のは全く別の話です。小さな箱の中に大人4人と荷物を収めて、スライドドアまで付けて、安全性も確保して、それを200万円台で売らなきゃならない。日本のメーカーが何十年もかけて煮詰めに煮詰めてきた、極めて特殊な商品です。
東:そうですよね。
F:それでもBYDはキッチリ造り上げてきた。少なくとも「日本の売れ筋の軽を真似て寸法だけ合わせました」、というクルマではない。剛性感は高いし、背が高いのに上屋がグラグラしない。こんな短期間でそこまでのものを造れたのはなぜでしょう?
東:軽自動車をやろうと決まる前から、じっくり研究はしていたんです。ベンチマーク用としてホンダのN-BOXやスズキのスペーシア、ダイハツのタントといった売れ筋の軽自動車は中国の研究所に並んでいました。







