東:それともうひとつ。今回(ラッコに)使っているX-PACK※も、ラッコのためにゼロから開発したものではありません。バッテリーと車体を一体化するセル・トゥ・ボディ(CTB)の考え方を含めて、小型車のパワートレインとして何か使えないかという研究を、5年くらい前からやっていたんです。

※X-PACK:床下のバッテリー部分に電動系の制御ユニットや充電器までまとめて収め、パックごと車体構造として使う、BYD独自の集積技術

使うか分からない技術も貯めておく、BYDの「引き出し」

東:BYDはプロジェクトが決まってから必要な技術を開発するというより、使うか使わないか分からない技術も含めて、様々な要素を事前に研究してたくさん持っているんです。いろんなカードを持っていて、商品を造る時に「今回はこれとこれを使うか」というやり方です。

F:使うかどうかも決まっていない技術を先にどんどん研究して、引き出しに貯めておく。そして商品を造る時に、その引き出しから必要なカードを組み合わせる。だから「日本で軽をやるぞ」と決まった時にも、ゼロから全部始める必要がなかった。引き出しから取り出せばよかった。

東:そうなんです。王総裁はもともとバッテリーのエンジニアですから、技術に対してものすごく貪欲です。使う時期が来るかどうか分からなくても、まず自分たちで技術をものにしてストックする。特許もちゃんと取っておく。だから「軽をやろう」と決めた時も、すぐにやれるだけの自信はきっとあったんだと思います。

 BYDは2020年くらいまでは年間40万~50万台くらいを販売するメーカーでした。でもそれ以前からバッテリーやプラグインハイブリッドをずっと開発してきて、技術の蓄積はたっぷりあった。そこに中国の新エネルギー車に対する政策的な後押しも重なって、2021年以降、一気に伸びていった、ということなんですね。