今、日本で個人が買える投資信託は全部で3376本。しかし、その中で「今、手元にお金がなくても個人が安心して資産を作れる投資信託」は、3376本中、たった9本だけだった!金融業界を20年以上見続けてきたセゾン投信社長が語る、読むだけで「投資信託」のことがすぐわかる、ここだけの話。今回は9割の人が勘違いしている投資信託の「値段」について。投資信託の「基準価額」は、「株価」とは違うのです。

投資信託の値段は、株価と違って
1日1回だけの算出になる

 今、ある投資信託をいくらで購入できるのか、あるいは解約するといくらになるのか、ということを示すのが、「基準価額(きじゅんかがく)」です。

 基準価額は、投資信託が今、いくらなのかということを示す数字で、株式でいうところの「株価」のようなもの、つまり投信の値段だとイメージしていただいても良いでしょう。

 ただ、株価と決定的に異なる点があります。それは、株価がマーケットの動向によって時々刻々と動いていくものであるのに対し、投資信託の基準価額はそこまでリアルには変動しません。日本の投信の場合は毎日1回、市場が終了した、午後3時以降に基準価額が分かります。

「株価」は、株式市場の取引に参加している市場参加者の需給バランスによって決まります。つまり、株式の買い手が多ければ値上がりし、逆に売り手が多ければ値下がりします。
これに対して、投資信託の「基準価額」は、需給バランスで決まるわけではありません。
ファンドに組み入れられている株式や債券の時価総額によって決まります。

 時価総額は「株価×発行済み株式数」という計算式で求められますから、結果的に基準価額は、株価や債券価格の動向に左右されます。あくまでもマーケットの価格動向を受けて決定されますが、ファンド自体の買い手、売り手のバランスで決まるわけではありません。これが、株価と基準価額の大きな違いです。

 基準価額がどうして株価のように、時々刻々、リアルタイムで変動しないのかというと、まさに計算が煩雑であるためです。投資信託に組み入れられているたくさんの株式、債券、その他の資産の時価総額を弾き出し、それを受益権1口あたりの価格に引き直して計算していますから、どうしても今のマーケット動向をすべてリアルタイムで反映した基準価額を算出するのが、難しいのです。

 そのうえ、海外市場に投資している投資信託もあり、そこには時差の問題も生じてきます。米国のマーケットなどは、日本の取引時間中には夜中で動いていないこともあります。ですから、米国株に投資する投資信託の基準価額を、日本の取引時間中にリアルタイムで動かすことはできません。

 したがって、投資信託の購入・解約注文を出した時点では、いくらで買えたのか、または売れたのかは分かりません。たとえば、午前9時に、日本株に投資する投資信託を購入した場合でも、いくらで買えたのかが分かるのは、その日の株式市場での取引が終了してからの、午後3時以降になります。

 時々、この点を指摘して、「投資信託は価格の透明性に乏しい」という方もいらっしゃいますが、それは違います。もちろん、デイトレードをしているような方であれば、リアルタイムの価格動向はとても重要でしょう。

 しかし、投資信託はデイトレードのような短期売買の対象となるような金融商品ではありません。あくまでも長期保有を前提にしたものですから、午前中に買い注文を出した後で株価が動いたとしても、長期的に見れば、それは誤差の範囲と考えることができます。そもそも短期トレードをするわけではありませんから、時々刻々と基準価額を変動させる必要もないのです。