高市内閣は食料品の消費税減税と同時に就業者負担軽減支援金を導入する Photo:JIJI
連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「就業者負担軽減支援金」です。政府は2027年度から就業者負担軽減支援金を導入します。中低所得の働く人を対象に、税・社会保険料の負担を踏まえて所得に応じた給付を行う新制度です。「年収の壁」による働き控えの緩和も狙います。どの所得層に、どのような仕組みで給付するのでしょうか。制度の骨格と課題を解説します。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
「給付付き税額控除」への第一歩
2027年度から就業者負担軽減支援金を導入
今回のキーワードは「就業者負担軽減支援金」です。
9月15日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定されました。
政府は2027年4月から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品について、消費税率を1%に引き下げる方針です。
これと同時に、飲食料品にかかる消費税1%相当分の範囲内で、所得に応じた給付制度を先行導入します。その制度が「就業者負担軽減支援金」です。29年度からは支援金制度を本格導入する方針です。
聞き慣れない名称ですが、簡単に言えば、中低所得の働く人を中心に現金を給付し、税金や社会保険料を差し引いた後の手取りを増やそうという制度です。
背景には、政府が進めている「給付付き税額控除」の導入があります。このキーワード解説でも以前取り上げましたが、簡単に振り返っておきましょう。
通常の税額控除は、所得税などの税額から一定額を差し引く制度です。しかし、所得が低く、そもそも納める税金が少ない人は、控除の恩恵を十分に受けられません。
そこで、税額から控除し切れない部分を現金で給付する仕組みが、一般的な給付付き税額控除です。政府は8月5日、その制度導入に向けた基本方針を閣議決定しました。
政府が特に着目しているのが、中低所得の現役勤労者が負担する税金と社会保険料です。所得が増えると所得税や住民税だけでなく、健康保険料や厚生年金保険料などの負担も増えます。
そこで政府は、税金だけでなく社会保険料、さらに現金給付まで一体として捉え、税・社会保険料から現金給付を差し引いた「純負担」を軽減しようとしています。
就業者負担軽減支援金は、その考え方を給付のみの形で先行して実現する制度です。政府はこれを「本格的な給付付き税額控除を導入する第一歩」と位置付けています。一方、将来の制度については給付だけに限定せず、税額控除との組み合わせも引き続き検討するとしています。
制度導入のもう一つの狙いが、いわゆる「年収の壁」による働き控えの緩和です。
短時間労働者については、これまで月額8万8000円以上、年収換算で約106万円以上という賃金要件などを満たすと、健康保険や厚生年金への加入対象となっていました。この「106万円の壁」と呼ばれる賃金要件は26年10月1日に撤廃され、今後は週20時間以上という労働時間が重要な基準となります。
一方、「130万円の壁」は残ります。健康保険の被扶養者や国民年金の第3号被保険者の年収が130万円を超えると扶養から外れ、勤務条件によって勤務先の健康保険・厚生年金、あるいは国民健康保険・国民年金への加入が必要になります。
その結果、収入が増えたにもかかわらず、新たな社会保険料負担によって一時的に手取りが減ることがあります。これを避けるために労働時間を抑える人が出ることが、「年収の壁」の問題です。
就業者負担軽減支援金では、所得が増えれば直ちに給付額を減らすのではなく、一定の所得層では所得の増加に応じて支援額も増やします。また、社会保険への加入によって手取りが減る人には「就業促進特例加算」を設けます。
単なる低所得者への生活支援ではなく、働いて所得を増やせば、手取りも増える制度を目指しているのが大きな特徴です。
次ページでは、現時点で決まっている制度の骨格を詳しく見ていきます。







