生産性(TFP:全要素生産性)上昇の停滞は、資本装備率(労働者1人当たり設備)向上の停滞によるほか、低生産性部門(産業)から高生産性部門への移動の低さという要因にもよっている。

 さらに投資の内容や性格に関しても、近年の日本の投資は省力化やコスト削減、すなわち後ろ向きの目的が強く、新ビジネス開発強化(前向き)の志向が弱いのではないか、成長を牽引するIT関連や無形資産投資(特に教育訓練投資)が見劣りするとの指摘もある(注2)。

投資はコスト削減寄りか
生産性が伸びても賃金は横ばい

 労働生産性の水準の国際比較は、為替レートと購買力平価のどちらで生産額を換算するかをはじめ、方法上の問題がいくつかあって簡単ではない。とはいえ、近年は先進国中で米国が頭1つ抜けていること、日本は低い部類に入っていること、がほぼ共有されている。

 より確かなのは国ごとの上昇率で、最近30年において、米国がIT・金融など非製造業の牽引で突出して高く、日本は英国より高いが独仏を下回るとされる。

 同じ期間の日本の時間当たり労働生産性は年率1.2%上昇である(これに対して実質賃金上昇はゼロ%とまったく横ばいであり、このことが際立っている[注3])。

 この生産性の低水準と停滞をめぐっては、いくつかの論点が挙げられている。(注4)

(注2) 深尾京司(2020)『世界経済史から見た日本の成長と停滞 1868-2018』岩波書店など参照。

[注3] この点は伊藤修(2016)『日本経済《悪い均衡》の正体』明石書店で広く論じておいた。

(注4) 経済産業省(2025)23-26ページ、『週刊金融財政事情』2021年10月12日号「生産性特集」、大守編(2021)178ページ、森川正之『日経・経済教室』2019年3月5日号、深尾京司『同』2013年2月7日号、など参照。