第1に「円高からの脱却」を考えよう。

 2007年までの円安は3~4%ポイントの日米金利差によっていた。ほぼゼロ金利の円を調達し、外貨に換えて運用する動き、「円キャリー・トレード」(円借り取引)である。

 ところがリーマン・ショック、世界金融危機で米欧が金融を緩和し、金利差が1%ポイント前後に縮小すると、円キャリー・トレードの「巻き戻し」(unwind)となって資金が還流、円買い=円高となった。これが、安倍政権成立時に問題とされた円高である。

 そののち米欧の金融危機が一段落すると、金利差は再び拡大(14年に2%ポイント超え)し、円キャリー・トレードの再開=円売り=円安となる。これがアベノミクス開始後の「円高是正」であった。アベノミクスによる低金利が作用しているのは確かだが、主要因は海外の金融の動きにあったのである。

 そして結果としてこの円安は、目標だったデフレ脱却も成長率上昇も伴わなかった。

 政治の世界では、政権側は自らの政策の功績を主張し、野党側は批判するものだが、このように経済の動きはそう単純に国内だけをみて、1つの政策の功罪で決まるとは限らない。それは次の2点についても同様である。

株価上昇を動かしたもの
企業利益と金利の影響

 第2に株価は、短期の変動がきわめて大きい資産価格であって、短期においては市場参加者の主流が共有するストーリー(シナリオともいう)によって動く。

 安倍政権成立時には、強い経済刺激策によって株価が上昇する、為替が円安になって輸出産業の好調が株価を牽引する、というストーリーが描かれ、それが実現した。後者の円安(予想)→株価上昇のパターンは、その後も何度かくりかえされた。

 より長期的には、株価のファンダメンタルズ(基礎的条件)つまり“実力”が動きを規定する。その主なものは企業利益と金利であり、利益が上がるほど、また金利が下がるほど、株価は上がる。

 実際には、GDPはほとんど増加しなかったが企業利益は大幅に増加し、株価上昇要因になったと思われる。ただしアベノミクスの政策目標は物価上昇を介したGDPの成長だった。その点で、成長を伴わない利益の増加や株価上昇は、政策の成果とは呼べない。