一見、純粋に「個人のやる気の問題」や「本人の姿勢の問題」と片付けられがちだが、果たして本当にそうなのか、一度立ち止まって冷静に考えてみる必要がある。むしろ、個人が学習に向かわない背景には、組織の構造や組織が求める働き方そのものが大きく影響している可能性が少なくないのではないか。
たとえば、人材に関するシンクタンクであるパーソル総合研究所の調査(※注3)では、働く個人が学習から遠ざかる要因として、7つの「ラーニング・バイアス」があることを示している。
具体的にあげると、「学びは新人や若い人だけがやるものである」と考える新人バイアスや、「今のままで十分仕事ができている」という現状維持バイアスなどである。
これらのバイアスが強いほど、個人の学習意欲や学習時間は減少する傾向があるという。
しかし、こうしたバイアスは個人の性格やもともとの考え方から生じるだけではない。組織の側に構造的な課題があることで引き起こされたり、強化されたりもする。その典型的な例としてすぐ念頭に浮かぶのは、今の業務が忙しすぎるあまり、時間的にも心理的にも、新たな学習を行う余裕のないケースだろう。
たとえ個人としての学習の大切さは認識していても、そうした状況では、今抱えている大量の業務を少しでも多く、あるいは効率的に捌く優先順位のほうが自然に高くなってしまう。それに伴って、学習とは「まだ仕事や時間に十分な余裕のある、新人や若手の専売特許」だと考えるようになるかもしれない。
組織内で自分が動くための
地図を持っている社員は伸びる
組織内地図は、図表1-5で描くように、組織や職場の目標である「目的地」、その中での組織における自分の立場や役割を示す「現在地」、そして、現在地から目的地に至るための「パス(経路)」という3つの要素で構成される(※注4)。
同書より転載 拡大画像表示
※注3 パーソル総合研究所(2024)「学び合う組織に関する定量調査」。2023年10月に、20歳から64歳までの全国の男女・正規雇用就業者6000人に対して実施された調査。
※注4 組織内地図の測定にあたっては、「目的地」には「21世紀の自分の会社のあるべき姿を認識している」、「現在地」には「上司から職場の目標をはっきりと示されている」、「パス」には「トップの経営方針と自分の仕事との関係を考えながら仕事をしている」という3つの質問項目を用い、主成分分析により抽出された第1主成分を「組織内地図」尺度(地図形成度)として用いている。
※注4 組織内地図の測定にあたっては、「目的地」には「21世紀の自分の会社のあるべき姿を認識している」、「現在地」には「上司から職場の目標をはっきりと示されている」、「パス」には「トップの経営方針と自分の仕事との関係を考えながら仕事をしている」という3つの質問項目を用い、主成分分析により抽出された第1主成分を「組織内地図」尺度(地図形成度)として用いている。







