この概念はもともと、組織で必要とされる人材像に関して、筆者が企業の管理職や人事関係者にヒアリング調査を実施した際、「欲しいのは(組織で動くための)地図を持っている人」という、異口同音の回答からヒントを得て導出したものである。組織内地図の3つの要素は、カーナビをメタファーとしている。
この3つが揃っているとき、働く個人は自律的に学習し、行動することが可能になる。
筆者がこれまで実施してきた複数の調査でも、組織内地図がしっかり形成されている(=地図形成度が高い)人ほど、学習活動が活発になることが繰り返し確認されている。
たとえば、バブル期に入社した社員の学習活動が、他の世代と比較して低調だと指摘されてきた現象を分析したところ(※注5)、実際に彼らの学習活動は最も低い水準にあった。
そして、それと同時に、図表1-6で示すように、地図形成度も他の年代より顕著に低いことが明らかになったのである。
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自分の現在地と目的地をつなぐ
複数の経路が見えているか
同様の傾向は、民間企業に限らず、自治体を対象にした調査(※注6)でも確認できる。
図表1-7は、横軸に個人の学習活動の活発さ、縦軸に地図形成度をとり、地図形成度の違いが組織で働く個人の学習活動とどのように関係するかを示したものである。
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地図形成度が高くなるほど、学習活動が「非常に活発」だと回答する割合が増え、反対に地図形成度が低くなるほど、「非常に不活発」と答える割合が高まることが読み取れる。
『「組織が変わる」には何が必要か――個人・職場・企業の学習の可能性』(安藤史江、筑摩書房)
このように組織内地図を構成する3つの要素はいずれも重要だが、現実にはどれかが欠けた状態で働いている個人は少なくない。とりわけ多いのが、目的地と現在地をつなぐ「パス」が不明瞭なまま仕事をしているケースである。しかし実際には、この「パス」こそが、学習活動の活発さを最も左右する要素なのである。
現在地から目的地までは、複数のパスがありうる。仮に目的地が同じでも、現在地が異なれば、とるべき道筋は変わる。また、目的地だけでなく現在地まで同じように見えても、自分がその他者と同じパスを選択できるとは限らない。能力やタイミング、上司との関係性など、各自を取り巻く状況や制約が異なるためである。
実際の道路でも、普段は通れる道が工事中で迂回が必要なことはある。立ち寄り先の有無やその数によっても最適なルートは変わる。選択すべきパスは、状況に応じて変わるのである。
※注6 全国市町村国際文化研修所における研修に参加した自治体の職員、計497名(回収率95.2%)を対象に、2009年5月に筆者が実施した「学習する組織づくりのための意識調査」。組織内地図の形成度を「非常に低い」から「非常に高い」まで、5段階をほぼ同じ割合になるように区切り、それぞれのグループの学習活動の分布を確認したもの。組織における学習活動も「非常に不活発」から「非常に活発」までの5段階で測定している。







