さらに厄介なのは、むしろ働く個人の学習を妨げるような対応をみせることすらあることである。「余計なことを考えず本業に集中しろ」と叱責したり、「そんな提案には意味がない」と頭ごなしに否定したり、ときには提案者個人の人格にまで踏み込んだ批判をするケースすらある。
勇気を出して提案したのに
職場は変わらずやる気が失せる
マーチ=オールセンの学習サイクルモデルでいえば、図表2-1で描くように、「個人の行為」と「組織の行為」の断絶が起きている状況といえる。
同書より転載 拡大画像表示
この断絶は「傍観者的学習」と名付けられている(※注1)。本来ならば、個人が組織の内外で学習してきたことは、組織を変える強力な触媒になりうるはずなのに、それを活かさないとは実にもったいないことである。
実際、働く個人からの、「勇気を出して提案したのに、上司も周囲も取り合ってくれなかった」、「社内の勉強会や学習コミュニティで盛り上がっても、その成果を仕事に反映する機会が得られない」などの不満はよく聞く話である。
シンクタンクであるリクルートマネジメントソリューションズの「上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査」(2021)(※注2)でも、上司と比べて部下が不十分と感じている項目の第2位に、「仕事や職場の課題について、あなたの意見やアイディアを求めること」がランクインしている。
こうした傾向は日本に限らない。調査プラットフォーム会社であるクアルトリクスが日本を含む17カ国で実施した2019年の調査(※注3)では、「従業員の声を収集する仕組みがある」と答えた人ほどエンゲージメントが高かった一方で、その声が改善につながっていると感じている人はわずか25%に留まった。
※注1 この断絶の名称は、組織が個人の学習成果を他人事のように扱い、組織とは無関係という傍観者的な態度でいることに由来する。
※注2 300人以上の従業員規模の企業の正社員729名(一般443名、部下をもつ課長相当の管理職286名)にリクルートマネジメントソリューションズが行った調査。
※注3 調査会社クアルトリクスが2019年に17カ国・地域の18歳以上の従業員を対象に実施した調査レポート「2020年従業員エクスペリエンストレンド」より。全回答のうち500件は日本から収集。
※注2 300人以上の従業員規模の企業の正社員729名(一般443名、部下をもつ課長相当の管理職286名)にリクルートマネジメントソリューションズが行った調査。
※注3 調査会社クアルトリクスが2019年に17カ国・地域の18歳以上の従業員を対象に実施した調査レポート「2020年従業員エクスペリエンストレンド」より。全回答のうち500件は日本から収集。







