自分たちの声が活用されていないと感じる人は、そうでない人と比較して、エンゲージメントが半分以下に落ち込むことも明らかになっている。

 同様に、人材管理ソリューション企業のUKG Workforce Instituteが11カ国で行った調査(※注4)では、回答者の63%が「自分の声は上司や雇用主に無視されている」とし、40%が「フィードバックが組織の変化につながっていない」と感じていた。

 このような「個人の行為」と「組織の行為」の断絶は、組織が意図せずに生じてしまう場合もあれば、意図的に起こされる場合もある。その原因は多層的なレベルに潜むが、中でも一般の働く個人に最も強い影響があるのは、やはり直属の上司との関係だろう。

 実際、働く個人が「組織」を思い浮かべるとき、真っ先にイメージするのは直属の上司が多い。

仕事ができる人だからといって
いい上司になれるとは限らない

 上司は組織内で選抜された昇進した存在である以上、部下より能力が高いはずだという見方がある。しかし実際には、上司があらゆる面で部下より優れているとは限らない。昇進に必要な能力は必ずしも連続的に積みあがるものではなく、役職が変わるたびにそれまでとは異なる能力が非連続的に求められるようになるからである。

 一般によく知られた「ピーターの法則」は、この問題を端的に表している。ピーターの法則とは、それぞれ教育学者と(劇)作家であるピーター=ハル(※注5)が提示した考えで、能力主義の階層組織では、働く個人は能力の極限まで出世する。

※注4 The Heard and the Heard-notsと題された2021年6月の調査報告書。

※注5 Peter, L. J., & Hull, R.(1969). The Peter principle. Morrow.(田中融二訳『ピーターの法則―〈創造的〉無能のすすめ』ダイヤモンド社、1970)