メディア興亡Photo by Shuhei Inomata

新聞発行部数の減少に歯止めがかからない新聞業界。だが足元では、複数の新聞社で賃金のベースアップが相次いでいる。労働組合の要求に対し、3年連続で満額回答に踏み切る社まで現れるなど、業界に吹く逆風に反して賃上げが進む理由とは何か。連載『メディア興亡』の本稿では、経営環境が厳しくなる中でも待遇改善を図る新聞社の心理に迫り、主要新聞社がどの程度賃上げしたかを社名と共に明らかにする。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

共同・時事は役員報酬カットも
主要新聞社で進む「賃上げ」の実態

 昨今、各業界で賃上げが相次いでいる。直近の数字を見てみよう。

 厚生労働省がまとめた民間主要企業428社の「春季賃上げ要求・妥結状況」の令和8年(2026年)版によれば、平均妥結額は1万8167円と2年連続で1万8000円台を記録し、賃上げ率は3年連続で5%台の高水準を維持した。

 一方、メディア業界を見ると厳しい状況が垣間見える。

 共同通信社や時事通信社は昨年以降、本業の低迷に加え、大株主である電通グループの巨額赤字に伴う減配・業績悪化の波及などを背景に、役員報酬のカットを打ち出した(詳細は『【内部資料入手】時事通信が役員報酬と幹部給与をカットし社員の異動凍結も…電通の赤字が波及、「もうこの会社にはいられない」社員が嘆く深刻事情』やメディア興亡#9『【内部資料入手】共同通信「初の赤字予算」の非常事態、2026年度の経費削減“これまで以上の努力”の中身』を参照)。

 通信社の経営不振の主要因は、記事の配信先である加盟新聞社で年々新聞発行部数が減少していることにある。日本新聞協会がまとめた「新聞の発行部数と世帯数の推移」によると、一般紙とスポーツ紙を合わせた総発行部数はピーク時の1997年には5376万5074部だったが、2025年には2486万8122部と四半世紀余りで半減している。

 各社がデジタル版の普及に努めているものの、紙での収入には及ばない。有料会員数106万人の「日経電子版」を擁する日本経済新聞社でさえ、近年は登録者の頭打ちに悩む。

 だが、本業の新聞発行が低迷する中でも、主要新聞社では近年、異例の賃上げが相次いでいる。果たしてどの程度給与待遇が改善されたのか。また、経営不振の中でもベースアップを進める意図とは何か。

 次ページで賃上げを実施した新聞社の実名と、ベアの規模について詳細を明らかにしていく。