メディア興亡 地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日(7)Photo:Sorapop/gettyimages

複数の投資家がひそかに連携して株式を買い集める「ウルフパック戦術」を巡り、地域情報紙大手の地域新聞社(千葉県八千代市)と買収者側の攻防が最終局面に差しかかっている。これまで実態の捕捉が困難とされてきたウルフ勢を、地域新聞社は1株を1.8株とする異例の株式分割によって表舞台に引きずり出した。さらに買収防衛策を発動し、千葉地方裁判所も会社側の主張を認めた。だがその代償は小さくなく、1億円を超える巨額の対策費用により赤字に転落。東証グロース市場からスタンダード市場へ移行し上場は維持したものの、時価総額は依然として低迷している。長期連載『メディア興亡』内の特集『地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日』の第7回の本稿で、その舞台裏を取材した。(フリーライター 松田晋吾)

姿なきウルフによる買収工作
忍び寄る株式買い集めの脅威

 9月3日、地域新聞社は筆頭株主に異動が生じたと公表した。

 筆頭株主に躍り出たのは、同社の細谷佳津年社長が代表を務める資産管理会社だ。地域新聞社が発動した買収防衛策の効力が8月下旬に生じたことで、ウルフパック戦術を認定された投資家グループは軒並み持ち株比率を下げた。国内の防衛策の発動は2007年に米系投資ファンドのスティール・パートナーズから敵対的買収を仕掛けられたブルドックソース以来となる。

 ウルフパックとは、単独では金融商品取引法が定める大量保有報告制度(5%ルール)や株式公開買い付け(TOB)規制に抵触しないよう、複数の投資家が連携して水面下で株式を買い集める投資手法で、「群狼戦術」とも呼ばれる。

 近年は時価総額の小さい上場企業が狙われるケースが相次いでいる。標的となった企業にとって厄介なのは、相手の姿が見えにくいことだ。経営側が異変に気付いたときには、すでに株主構成が大きく変わっていることも少なくない。

 地域新聞社が異変に気付いたのは25年8月末の株主名簿だった。ウルフパックの疑いが浮上し、両者の攻防は委任状争奪戦に発展。同年11月の定時株主総会では、取締役選任議案などで会社提案が辛うじて可決された。

 26年1月には独立委員会が、経営コンサルティングを手掛けるMTM Capital(以下MTM)などについて、共同協調行為を行っていると認定した。地域新聞社はウルフパック問題が浮上する前から買収防衛策を導入していた。このためウルフ側が20%以上を保有していると証明できれば、取締役会決議のみで発動できる仕組みを整えていた。

 だが、防衛策の実行を目前にして巨大な実務上の障壁が立ちはだかった。発動の決め手となる「敵の正確な把握」を阻む巧妙なわなに対し、経営陣は絶体絶命の危機に追い詰められる。この手詰まりの状況を破るため、彼らが放った起死回生の一手とは何か。次ページで明らかにする。