さらに、心理学者ダッチャー・ケルトナーが提唱した「権力の接近・抑制理論」では、人は権限を持つほど他者への共感が低下しやすく、自分の判断を過信する傾向があると説明しています。クラッシャー上司はもともと悪い人なのではなく、自らの権力により、周囲から反対意見を言われなくなることで、自分の言動を客観視する機会が減り、不適切な言動をとってしまうとも言えます。
こうした心理学の知見から見えてくるのは、クラッシャー上司は、「学習」「ストレス」「権力」という3つの要素が重なった結果として生まれやすいということです。だからこそ、個人の資質だけに期待せず、組織全体で予防し、管理職を支える仕組みをつくることが重要だと考えます。
相談者の27.8%が頭を悩ます
上司の「不機嫌ハラスメント」
同じように、最近「不機嫌ハラスメント」が話題に上がります。これは、怒鳴るわけでも、明確な暴言を吐くわけでもありません。しかし、ため息をつく、無視をする、露骨に機嫌の悪い態度を見せるなどによって、周囲に強い心理的圧力を与える行為です。
もしかすると、「不機嫌ハラスメント」は、これまでの社会生活では許容されていたのかもしれません。かつての職場では、「上司は厳しくて当たり前」「あの上司はとっつきにくいから」「重要さを示すためにリーダーは感情を表に出すべき」といった価値観が少なからず存在していました。そのため、怒りや不機嫌を周囲にぶつける行為も、「仕方がない」「我慢すべきもの」と受け止められ、問題として認識されにくかった側面があります。
しかし、実際には不機嫌は周囲の心理的安全性を損ない、自由な発言や挑戦を妨げ、生産性や職場の雰囲気にも悪影響を及ぼします。近年になって「不機嫌ハラスメント」という言葉が広まった背景には、こうした行為が組織全体に負担を与えると認識されるようになったことがあります。時代の変化とともに、感情の扱い方もリーダーシップの重要な要素として問われるようになっているのです。
カウンセラーアンケートによると、相談者のうち27.8%の方が「不機嫌ハラスメント」に悩んでいます。







