『コンプラ過剰社会 法令遵守が私刑の武器に変わるまで』(舟津昌平、中央公論新社)
お前は交通事故を起こすかもしれない潜在的加害者だと言われて、本当に交通事故を起こさないために全力を尽くすなら、最終的には車を運転するのを止めるしかなくなる。さまざまな評価が同等で性別だけが異なる学生が2人いたとして、「迷ったら男」という意思決定は、男性中心主義に基づく不平等として批判されてきた考え方だ。ところがそれを是正しようとしたことによって、リスク回避ゆえに男性を選ぶということが起こりうる。
コンプライアンスを意識するがあまり、まだ何もしていない人を潜在的加害者とみなすようなルール設定が、特にハラスメントまわりでは横行している。無実の人を萎縮させる悪循環を避けるために、リスク(発生確率)とハザード(被害の大きさ)の峻別が必要なのだ。
学校や職場におけるセクハラなどのハラスメントは未だに問題であり続けており、根絶できてはいない。だからそういった事案を防ぐ意味は自明なのだが、起きる蓋然性と起きたときの被害の大きさを分けないと、不合理なルールを設けることになってしまう。特に、分別ある人を萎縮させてしまう。コンプライアンス違反への対処、特にルールを策定するか否かにおいては、図2にまとめたようにリスクとハザードの峻別が必要である。
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