メディア興亡Photo by Shuhei Inomata

同僚職員の男からストーカー被害を受けた共同通信社の女性職員が退職勧奨を受け、「会社都合退職」していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。男は警視庁にストーカー規制法違反容疑で書類送検されている。女性職員は労働組合や弁護士に一連の経緯を相談し、「退職は本意ではない」と訴えている。共同通信は被害を受けた女性職員になぜ退職勧奨をしたのか。連載『メディア興亡』の本稿では、関係者への取材から真相を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

ストーカー事件の陰で
被害女性に「退職勧奨」

 8月18日、共同通信社は1本の記事を自社ニュースラインで配信した。タイトルは「共同通信職員を書類送検」というものであり、自社職員の不祥事を伝える内容だった。

 同社によれば、警視庁四谷署は8月18日までに、ストーカー規制法違反の疑いで共同通信社の継続雇用職員の男(61・共同通信の記事原文では実名)を書類送検した。送検は8月14日付であり、検察官に刑事処分の判断を委ねる「相当処分」の意見が付けられている。

 容疑内容は、7月15日から16日にかけて知人女性に対しLINEで計13回にわたり面会や交際を要求するメッセージを送信し、不安を感じさせる方法でストーカー行為をしたというものであり、男は容疑を認めているとされる。

 なお、同署は7月17日に同容疑で男を逮捕していたが、共同通信が配信した記事中では「女性の説明に事実と異なる内容が含まれていたことなどを考慮して即日釈放し、任意で捜査を続けていた」と説明されている。

 この報道に際し、共同通信の清水健太郎総務局長は「当社の職員が書類送検されたのは大変遺憾です。事実関係を確認した上で、厳正に対処してまいります」とのコメントを出した。

 報道では被害者は「知人女性」と表現されていた。だが、ダイヤモンド編集部の取材で、実際には被害者は同僚である共同通信の40代の正職員だったことが分かった。

 共同通信の職員就業規則では、第73条に懲戒事由が定められており、第3項では「法規に触れる等、職員としての体面を汚したとき」や、第9項では「他人に危害、暴行、脅迫、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントその他不都合な行為をしたとき」などと規定されている。公的機関によってストーカー行為が認定され書類送検された男の行為は、これら複数の懲戒事由に該当する可能性が高いとみられる。

 ところが、共同通信は、加害者とされる男に対する調査や処分にとどまらず、被害に遭った女性職員に退職勧奨を行い、最終的に女性職員を「会社都合退職」とした。

 男のみならず、ストーカー被害を受けた女性職員がなぜ退職することになったのか。8月18日の共同通信の報道だけでは見えてこない社内調査の様子や、その際に浮かび上がった職員を守るための安全管理上の課題などについて次ページで明らかにする。