同じ「世界一」とういビジョンを掲げるにしても、市場の魅力度、競争の激しさ、自分達がどれくらい向いているかを考えて、何をやるかを決める必要があります。何をやるかによって、ビジョンを達成したときのリターンも、達成の確率もまるっきり変わってきます。さらに、その後のどのようにその競技で世界一になるかという戦略の詳細も競技によって変わってきます。

 そう言った意味では、ドメインの設定は戦略策定のミソ中のミソなのです。ドメインの設定そのものが戦略の巧拙の大半を占めているような気さえします。では、その肝心のドメインはどのように設定したらよいのでしょうか。ズバリ
1. 市場性
 2. 競争環境
 3. 自社適合性

の3点を考慮する必要があります。

市場性:成長市場の伸びに乗っかるのが一番楽チン

 基本的には、市場規模は大きいか、またその市場は成長市場か、その成長性はどのような時間軸で進展していくかが判断ポイントとなります。要するにその市場はオイシイ市場かということです。一番オイシイのは市場そのものが伸びている成長市場です。ソーシャルゲームがその典型でした。ゼロから3年で3000億円の市場になり、その中にいたプレーヤーは全体として急成長を遂げました。

 次にオイシイのは、市場全体としては横ばい(または漸減)でも、伸びている特定のセグメントにフォーカスすることです。たとえば、筆者の担当投資先の「しまうまプリント」(ある大企業にかなり大きな金額でM&Aされました)は、デジカメの写真プリントサービスをオンラインで特化して展開していました。写真プリント市場は完全に横ばいの低成長市場ではありましたが、その中でオンラインプリントのセグメントは急激に立ち上がり、シェアを拡大していました。

 オンラインセグメントは、私たちが投資した2010年段階では全プリント市場の数%ほどでしたが、それから年率70%の成長を遂げ、2012年段階では全プリント市場の10%程度まで成長していました。先行する米国や韓国の市場をみると全プリント市場の40%~50%をも占めていて、さらなる成長が見込めました。そして、米国や韓国が伸びた背景を調べてみると、オンラインセグメントが伸びるトリガー(前提条件)が、ブロードバンドのITインフラが整っていること、高度な物流網が発達していること、オンラインのプレーヤーが登場して価格破壊を進めることでした。

 そういう意味では、日本は完全にオンラインプリント普及前夜で大きな伸びが見込まれる状況でした。しまうまプリントは、見事にもくろみ通り、セグメントの伸びとともに事業が急拡大していったのです。

 問題なのが、市場もセグメントも伸びていない場合です。純粋に経済合理性の観点から、魅力的かどうか、勝てるかどうかで見てしまうと、基本的には新規に参入しないほうが得策です。すでにその市場の中で勝ち組であったり、特定のニッチセグメントでは持続可能な競争優位性が確保されていたりなど、よほど現在のポジショニングが良くないと、あえてそのドメインで戦う選択をしないほうが賢明でしょう。