起業家やベンチャーが育たない国、日本。その日本で、ミドリムシを武器にグローバルな飛躍を目指す株式会社ユーグレナの代表取締役・出雲充氏。現状を悲観するのではなく、どんな条件が揃えば起業家やベンチャーが成功できるのかを考えたいところです。
若き起業家に向けたセミナーや勉強会を開催している新氏から出された答えは「メンター、座学、修羅場」。今回はこの3つのキーワードについて意見を交わします。

メンターがいれば必ずリカバリーショットを打てる

修羅場という実践の場でしか<br />得られないことがある。<br />勝ち残るマインドセットをいかに育むか出雲充(いずも・みつる)
株式会社ユーグレナ 代表取締役社長。
1998年東京大学文科三類入学、在学中に米国スタンフォード大学で開催された「アジア太平洋学生起業家会議」の日本代表を務め、3年進学時に農学部に転部。2002年東京三菱銀行に入行。退職後2005年8月株式会社ユーグレナを創業し代表取締役に就任。同年12月には世界で初となるユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功する。
著書に『東大に入るということ、東大を出るということ』(プレジデント社)、『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(ダイヤモンド社)等。

出雲 伊藤忠商事をはじめ素晴らしいパートナーシップが築けたことにより会社として安定しましたが、それまでは必死でした。私たちがミドリムシ研究を成功させなければ、今後もしかしたら二度と陽の目を見るチャンスがないかもしれない。これまで研究されてきたことをすべて使い切るわけですから、過去の研究の蓄積に対して失礼のないアクションをとらなければ、と。

「ミドリムシで地球を救う」という私の壮大なミッションを笑わずに一緒にやろうと言ってくれた仲間たちには感謝しています。仲間に恵まれたという思いが非常に強いです。

 経営者が夢や志、情熱を持っているってことが一番大事です。これはもう理屈じゃないんです。今後出雲さんがさらに飛躍するためには、その仲間にメンターを加えるといいでしょう。

 先ほどはなぜ日本で起業家が育たないのかという話をしましたけれども、逆に、成功している起業家には必ずメンターという存在がいます。出雲さんが社長だというだけで、揉み手をしながら近寄ってくる人が今後さらに増えていきます。すると人間は弱いところがあって、どうしても自分が偉いんじゃないかなと勘違いしちゃうんですよね。だから自分への苦言とか直言、耳に痛いことを言ってくれる人を探しましょう。

出雲 新さんはどうやってメンターに出会ったんですか?

 出席した勉強会の講師の方に直談判して、メンターになってもらったことがあります。5年前まではメンターが5人いたんですが、次々に亡くなって、今では残念なことに1人しか残っていませんけれどね。

 それでも、私が疲れたり、迷ったりしたときにメンターに会ってもらうと、とても元気が出てきます。転んでも必ず起き上がれるような言葉をくれるありがたい存在です。メンターは誰でもいいんです。たとえば大学の先輩でもいいし、会社の上司でも親戚のおじさんでもいい。だいたい年寄りは暇だから会ってくれますよ。

出雲 本当ですか?そうだと嬉しいですが。

 それに、たいていごちそうしてくれますよ(笑)。私だって若い世代の方に頼りにされると嬉しいですからね。メンターは自分で探すものですから、そこは積極的にね。