(1)の「不平不満解消型」には、2つの問題点があります。

 1つ目は、起業してからもサラリーマン時代のようなつらいことはしょっちゅうあります。むしろ、不平不満はますます増える可能性もあり、マイナスを埋めるどころかマイナスエネルギーが増えていくかもしれないこと。

 2つ目は、起業後の努力が実って、マイナスが解消できたときにどうするか。起業の目標が不明確なだけに、そのあとどのように振る舞うか途方に暮れてしまいます。目の前の困難を乗り越えられず、途中で挫折してしまうのではないでしょうか。

 つまり、不平不満は起業のきっかけにはなるものの、事業を成長し続けるための原動力にはなりにくいということです。たとえ(1)の人でも、(2)のような「事業に対する強い思いや夢」「将来の目標」を持っていれば、事業は継続してやがては花開くと思います。

サラリーマン時代と同じ仕事を続けても意味がない

 先ほどの「不平不満解消型」に多いのが、運送業、建設業、ソフトウェア開発業などの会社に勤めていた人が、そろそろ実力もついたし、サラリーマンが嫌になったという理由で、それまでと同じ職種・仕事で独立開業するというパターンです。

 しかし、これではまったく発展性がありません。このような「今までのマイナスを埋める」方向性の起業を「会計」というメガネを通して見ると、どう映るか考えてみましょう。

 その人が勤めていた会社側からすると、以前は「給与」という人件費勘定で支払っていたものが、「外注費」という経費の処理に変わります。「給与」の場合は、この他に法定福利費、福利厚生費、仕事場所の確保、設備の減価償却費・維持費などが加わりますが、「外注費」の場合はその付加部分の支出が不要になります。

 また、仮に「給与」と「外注費」の支払額が同じだとすると、「給与」には消費税はかかりませんが「外注費」にはかけられる(内税部分が仮払消費税として抜ける)ので、消費税分が得をする計算になります。

 つまり、会社側から見ると、付加部分の支出が不要で、なおかつ消費税が抜けるという相当なコストダウンにつながります。それだけでなく、その後の交渉しだいでは、仕事そのものをなくせる(削減できる)可能性すらあるのです。

 何が言いたいかというと、同じ職種・仕事で、勤めていたときと同じ程度の報酬総額を稼ぐためだけに独立開業するのでは、起業する意味がまったくないということです。未来が開ける、成長するという高い目標を持って積極的な起業をしないともったいない。自分の限界を決めず、自分の可能性に賭ける起業に挑戦してほしいと思います。いかなる起業も、夢と希望を持ってチャレンジすべきです。