東京電力福島第一原発の地上タンクに設置されている漏水防止用の堰(せき)から、放射性物質に汚染された雨水が流出したと言う。原因は降雨量の想定数値が低過ぎたということらしい。東電からまたもや「想定外」の言葉が出てきた。

 一体、東電も原発行政も今まで何をやっていたのかと激しい不満と疑いが湧いてくるのを禁じ得ない。

 東電は10月20日の降雨量を30~40ミリと想定していたが、実際にはその3倍(102ミリ)の雨が降った。だから汚染された雨水が溢れ出たというのである。午後2時頃からは1時間で30ミリ、なんと1日の想定分が降ったのだから「雨の想定が甘過ぎた」(東電)なんてものではない。大雨を全く軽視していたということだ。

汚染水流出問題を招いた「2つの落度」

 この一件を常識的に考えると、次のような落度があった。

 まず、今節、大雨は珍しくない。降雨量の高めの想定は当たり前で、さらに原発汚染水漏れの危険性があるのだから、堰の高さも常識的な想定の2倍から3倍を考えて対応するのが当然だろう。

 次に、東電は堰の中の雨水を汲み上げるポンプの能力が不足したことも原因の1つと強調している。

 4日前の16日に台風26号による大雨が降り、ポンプが足りなくて堰内の雨水を汲み上げ切れなかったという。何と20日の大雨が降る前に、大半の堰が水位20センチを越え、なかには堰の高さ(30センチ)とほぼ同じ高さのところもあったという。

 要するに、それほどの大雨でなくても、堰から水が溢れる状態にあったのだ。

 雨が降れば汚染水が溢れ、それが海岸にまで流出する可能性が高いのに、なぜ東電はポンプを増設したり、消防車など代替機能を備える努力をしなかったのか。

 このところ、福島第一原発の事故現場では大小さまざまなミスが相次いでいる。懸命に働く作業員の疲労も極致に達しているに違いない。

 だが、今回の事態は今までのミス以上に深刻な理由によるものと私は受け止めている。