観客が523人しか入らなかった甲府―札幌戦は熊本のうまかな・よかなスタジアムで行われた(この場合はどのクラブが勝ち上がっても熊本とは縁がなかったが)。札幌はもちろん甲府からも熊本は遠い。よほど熱烈なサポーターでもなければ高い旅費を出して熊本まで応援に行く気にはならないだろう。熊本にも甲府と札幌の試合を観たい人は少ないはず。それが523人という観客動員数に表れている。

 クラブサイドも天皇杯のPRはあまり熱心ではない。主催権がないため、大きな収益につながらないからだろう。ただし上位に進出すれば別。強化費という名目の賞金が入るからだ。優勝で1億円、準優勝5000万円、ベスト4で2000万円だ(J1リーグ戦は優勝賞金2億円、準優勝1億円、3位8000万円と7位まで賞金が出る)。だからクラブも準々決勝あたりまで勝ち上がると、サポーターに応援を呼びかけるなどPRに努めるようになる。

トーナメントの序盤では
熱くなれない?

 また、こうした要因とは別に、日本のファンにはカップ戦で盛り上がるという文化は根づいていないのかもしれない。長い間日本で一番の人気を誇ったスポーツはプロ野球だ。プロ野球はシーズンを通してペナントレースという順位争いをする。野球ファンとサッカーファンは別ではあるが、Jリーグファンにもシーズンを通した順位争いを好む感覚があるのではないだろうか。リーグ戦なら応援するクラブが優勝争いするかどうかの楽しみがある。優勝が無理なら順位争い、またその一方でJ1残留争いのハラハラドキドキもある。カップ戦の一発勝負も面白いはずだが、それは準決勝あたりまで勝ち上がった場合であり、ベスト16程度では熱くなれないのだろう。

 天皇杯とは別に日本にはリーグ戦の最中に並行して行われるヤマザキナビスコカップというカップ戦がある。リーグ戦と同じ時期なのだから観客も同じくらい入って当然に思えるが、やはり大観衆が集まるのは準決勝以降で、グループリーグの観客は少な目だ。

 それを考えると本田が初ゴールを決めたイタリア杯5回戦にあれだけの観衆が集まり熱狂することに驚かざるを得ないのである。