シリーズ2回目では、いかにすれば良質な経験を積むことができるかについて解説した。分析の結果明らかになったのは、次の3点である。
①過去の経験が、現在の経験に強い影響を与えている
②「学習志向」(好奇心・挑戦心)が高い人ほど、連携や変革を経験している
③社内外のキーパーソンと対話する機会が多いほど、連携や変革を経験している
3回目の本稿では、これらの発見に基づいて、マネジャーが経験から学ぶことをいかに支援すべきかについて、具体的なマネジメントのあり方を考えたい。
第1のマネジメント:
若い頃から連携・変革に参加させる
まず大切なことは、早い段階から「他部門や社外との連携」や「変革活動」に参加させることで、経験の連鎖の中に組み込むことである。ある程度の基礎力が身についた20代後半から30代前半の若手や中堅社員に「連携」「変革」の仕事を割りあてることが、優れたマネジャーを育てるカギとなる。
年功を重んじる日本企業では「まだ若いから」という理由で、チャレンジングな仕事を任せられない風土が残っているかもしれない。しかし、多少未熟な人材であっても、まずは雑用係や使い走り役として連携や変革に関わることにより、挑戦的な仕事の「においを嗅ぎ」「雰囲気を肌で感じる」ことができるだろう。
例えば、小規模な部内変革や、周辺的なメンバーとしての参加から始めて、徐々に「事業部変革→全社変革」と変革のレベルを上げたり、「中堅メンバー→リーダー」という順に責任を重くすればよい。
某老舗メーカーでは、入社10年目までの若手が、新規事業開発の中心として活躍し、ときにプロジェクトリーダーを務めることもある。同社は、時代とともに主力事業を移してきたが、その原動力は若手・中堅によって実施された新規事業開発であったという。