経営 X 人事
日本を元気にする経営学教室III
【第13回】 2014年2月12日
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松尾 睦 [北海道大学大学院教授]

優れたマネジャーになる・育てる(第3回)
マネジャーを育成する仕組み作り
――北海道大学大学院教授 松尾 睦

 まず成長テーマはフェーズ毎に異なる。3つの能力のうち、フェーズⅠでは目標共有力や情報分析力の獲得が中心になるが、職位が上がるにつれて事業実行力のウエイトが大きくなっている。

 これらの能力を獲得するために必要なのが、3つの仕事経験である。キャリア初期には、部下育成、変革参加、部門連携といった経験を個別に積んでいくが、フェーズが進むにしたがい、これら3つの経験が統合されていかなければならない。例えば、部長クラスになると、部門連携しながら変革を実行し、その中で部下を育成することが求められる。

 その際、経験を個人任せ、職場任せにせず、組織的に支援することが重要である。組織的支援には、研修、ワークショップ、情報交流のように、情報共有を促すタイプの支援と、変革プロジェクトの公募、ジョブローテーション、社内塾のように、経験そのものをリッチにする支援がある。

 最後に忘れてはならないのが評価・診断である。組織メンバーが質の高い経験を積み、必要な能力を獲得しているか、適切な姿勢で仕事にのぞんでいるか、上司から支援を受けているか等をサーベイによって定期的にモニタリングする必要があるだろう。こうした支援策を組織的・計画的に実施することで、マネジャーの経験学習の質を高めることができるのである。

まとめ

 放っておいても良質な経験を積むことができたバブル時代までとは異なり、企業内の「経験からの学習」を偶然に任していては、マネジャーの力不足を解消することはできない。今求められているのは、意図的に経験学習をマネジメントする工夫である。

 シリーズ3回の内容をまとめると次のように要約できるだろう。すなわち、マネジャーを成長させるために重要なマネジメントは、①好奇心・挑戦・独自性を大切にする「学習志向」を刺激しながら、②社内外のキーパーソンと対話する機会を提供し、③「連携」「変革」「育成」といった良質な経験を、若いうちから計画的に積ませることである。

 これらの施策を実行することが、優れたマネジャーの育成だけでなく若手・中堅の成長、ひいては企業全体の発展につながると考えられる。

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松尾 睦 [北海道大学大学院教授]

まつお・まこと 1988年小樽商科大学商学部卒業。2004年ランカスター大学経営大学院博士課程修了。Ph.D. (in Management Learning)。神戸大学大学院経営学研究科・教授を経て現職。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

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