セコムは五輪期間中も競技施設の警備を行い、ピーク時には100人近くの警備員を関連施設に配置している。その後、「ガードマン」という言葉が全国的にも知られるようになり、テレビドラマの題材にも取り上げられた警備業界は、急速に成長を開始する。

 1964年大会で投入された民間警備員が100人ほどであったことを考えると、2020年大会で必要とされる1万4000人の民間警備員の確保ははたして可能なのだろうか?

「警備会社は現在大小合わせて約9000社あり、業界全体では約53万人が働いている。現在これだけの労働人口を抱える警備業界だが、オリンピックについて言えば、選手村等の建設から大会までを含めても期間が短い。東京五輪招致のプレゼンの際に公表された資料では警備の概要も公表されており、5万人が警備に配置される計画で、そのなかで民間の警備員も1万4000人投入されるという試算が出ている。64年大会と比較すると、民間警備員の数が2ケタほど違ってくる」(安田稔・セコムコーポレート広報部部長)

 安田氏が続ける。

「弊社にはハイテク機器を使った警備の実績もあり、東京五輪に向けてはそういった警備の仕方も提案していきたいと考えている。人的警備の面では、オリンピック期間中に合わせて1万4000人の人材を集めるのは決して簡単なことでなく、弊社を含めた数社で対応できるかすら分からないのが実情だ。業界全体で対応しなければ、これだけの数の警備員を一定期間オリンピック会場周辺などに配置するのは難しいだろう。人員確保も大きな課題だが、人的警備にハイテク技術を用いた警備を活用することで、質の高い警備が可能だと思っている」

 企画部の長谷川精也担当部長も、五輪期間中の人的警備が業界にとって大きな課題になるだろうと語る。

「民間の警備会社といっても、それぞれの会社にすでに顧客がおり、1万4000人を集めるのは大変な作業だ。現在、日本全国の様々な場所で警備業務に携わっている人の数が約53万人。この中から1万4000人をオリンピック期間中に確保するのは難しい話だ。逆に一時的な措置として雇用を増やした場合、警備員のクオリティを一定の高さで維持できるのか、また大会終了後に雇用を維持できるのかという課題もある」

東京五輪は警備業界にとって
“見本市”的存在になるか?

 人的警備に必要とされる1万4000人の警備員確保は、業界全体でスクラムを組んで対応しなければならない問題だ。だが同時に、オリンピックはこれまで準備してきた新たな取り組みを、前に進めることができる絶好の機会だという捉え方もできる。

 その一つが、前出の安田部長が言うハイテク機器を使った警備で、東京五輪までに実用化の目途が立ち、実際に五輪期間中に活用された場合、日本の警備業界は新たな市場開拓に成功するかもしれない。